「熊谷6人殺害事件」から7年 妻子を喪った遺族が語る「生きる道を教えてほしい」

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「そこまで思いつかなかった」

 これに対し、捜査一課長はこう弁解した。

「(ナカダが)熊谷署から出て行く時に、玄関先から急に走り出してしまった。その時点でなんらかの犯罪を犯していたわけではないので、当然、公開(捜査)というふうにはならなかった」

 続けて、1件目の夫婦殺害事件が起きた段階で、事件とナカダを結びつける証拠がなかったため、「そこまで重大な事件に発展するとは予測がつかなかった」と主張した。

 熊谷署から逃げた時には罪を犯しておらず、14日に夫婦殺害事件が起きた直後は、ナカダを検挙するに十分な証拠は固まっていなかった。よってナカダを「危険人物」として住民たちに知らせるのは不安を煽るだけで、時期尚早だと言っているのである。

 しかし加藤さんはこう語気を強める。

「私の家の2軒隣まで警察犬が来て、なんでこういう外国人が来ていると言ってくれなかったんですか?」

「そこまで思いつかなかったです」

 この「思いつかなかった」という捜査一課長の言葉が加藤さんの逆鱗に触れた。

「思いつかなかったで、6人亡くなっちゃったんですよ! その辺は判断ミスとして受け取ってもらえないのか?」

 捜査一課長がこう切り返す。

「ミスがあったのかと問われれば、場面、場面において違法なことがあったとか、不当なことがあったとかまでは考えておりません」

「そういう答えは聞きたくないです。判断のミスですよね? 周りの方に注意喚起をしなかった判断ミスですよね?」

 繰り返し問い詰める加藤さんは、県警側の判断の問題点を指摘するが、捜査一課長は一向に認めない。議論は平行線をたどり、加藤さんはこう締め括った。

「私は県警の判断ミスだと一生背負って生きていくと思います。申し訳ないですけど、埼玉県警の人は何も信用できないです」

 そう言われても県警としては、加藤さんからの捜査協力が必要だった。捜査一課長からその旨を伝えられると、加藤さんはやぶさかではないといった態度を示し、沈痛な思いを口にした。

「別に捜査への協力を拒否しているわけではありません。今は本当に気持ちが重たいんです。家族のことを思うと、1日を生きていくのが辛くて。私自身も死んでしまいたいと思うぐらいですよ。生きていても、もう意味がないんじゃないかと」

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