100歳まで生きる人に共通する性格傾向、なってはいけない疾患は? 慶應大・百寿総合研究センター長が明かす

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アルブミンの濃度が低いほど、死亡率が高い

 次に、体内で合成されるたんぱく質の「アルブミン」に関してです。アルブミンは、血液や体内の水分量を調節し、血管内の物質の運搬を助ける役割を果たしています。そして、85歳以上の高齢者1427人の血液データを解析した結果、血液中のアルブミンの濃度が低いほど、死亡率が高いことが分かりました。平たく言うと、85歳以上長生きする方の体内には、アルブミンが多くあるということになります。

 これら二つの結果から、こう考えることができるでしょう。

 超百寿者は、心臓と腎臓、そして全身を巡っている血管、この三つの機能の衰え方が非常に緩(ゆる)やかである――。

 私たちの心臓と腎臓は、互いに密接に協調して血圧や体液などの量を調節し、全身に万遍なく血液を行き渡らせています。そのため、心不全や心筋梗塞などを発症し、心臓の機能が低下すると腎臓の働きも落ちます。逆に、糖尿病や高血圧等で腎臓が弱っていると、次第に心臓の働きも低下していきます。これを「心腎循環システム」と言いますが、このシステムを高い水準で維持すること、すなわちいかに心臓と腎臓の機能を保つか、それが健康長寿につながる道であると考えられるのです。

「老年的超越」

 この分析結果を参考にしつつ、誰もが健康長寿を享受できる社会が理想ではあります。しかし、残念ながら現実はそうではありません。繰り返しになりますが、百寿者で自立した生活ができているのは2割に過ぎず、残りの8割は何らかの形で介助・介護を必要としています。

 以前の自分と比べて思うように体を動かすことができないと、一般の高齢者は「幸福感」が落ちます。自分は不幸である、悲しいと感じる傾向が強まるわけです。高齢者に限らず、生活上の不自由さが強まれば、幸福感が低下するのはある意味で自然といえるでしょう。

 しかし、不自由さを悲観する必要はないのではないかと私は考えています。ADLが低く、必ずしも健康長寿とはいえない状況で、100歳まで生きながらえるのはむしろ不幸なのではないか――そんなふうに考えなくてもいいと思うのです。

 なぜなら、百寿の方々は、思うように体を動かせなくても、周りが想像するよりもご自身の中では幸福感が高く保たれているからです。寝たきりの高齢者を見ると、周囲は勝手に「この人、生きていて楽しいのだろうか」などと思ってしまいがちです。ところが、寝たきりの当人にしてみれば、その生活がさして苦ではなかったりするのです。これを「老年的超越」と言います。

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