【初恋の悪魔】残り3話 見えてきた雪松鳴人署長のリバーシブル

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 坂元裕二氏(55)が脚本を書いている日本テレビのミステリアスコメディ「初恋の悪魔」(土曜10時)は第7話まで終了した。残り3話。物語全体に横たわるキーワードは9月3日付本稿でも書いた通り「リバーシブル」に違いない。事件を読み解くポイントは被害者3人が同年齢であることだ。

悠日も鈴之介も小鳥も2面性がある

 このドラマのキーワードは「リバーシブル」。これを踏まえるとテーマも事件の真実も見えてくる。

 このキーワードは第1話から提示されていた。ヒロインで神奈川県警境川署生活安全課員の摘木星砂(松岡茉優)が着ているスカジャンである。

 星砂はシャンパンゴールド地に「赤虎」が刺繍された面を着ているが、その内側には緑色地に金色の「龍」が縫い込まれた面がある。どちらかが表というわけではなく、両表である。

 龍は古来、ヘビと関係が深いと信じられている。例えば鳥取県には「ヘビは山で1000年、海で1000年、野原で1000年修行をすると、天に昇って龍になれる」との言い伝えがある。普段は隠れている龍の刺繍は、星砂が平素は見せないヘビ女を指すに違いない。

 スカジャンが両表であるように星砂の2つの人格はどちらも本人。元同署総務課・馬淵悠日(仲野太賀)と交際しているのが真の星砂である一方、同署刑事課の鹿浜鈴之介(林遣都)と好き合っている星砂も本物である。

 そもそも人間は誰でも多面的。星砂はそれが極端に2分化されて表れるのだろう。

 考えてみると、悠日と鈴之介の人格も1面しかないわけではない。平凡で愚直な男に見えた悠日の場合、星砂を愛し、鈴之介や同署会計課の小鳥琉夏(柄本佑)と友達になったことにより、同署警察署長・雪松鳴人(伊藤英明)を殴ってクビになるほど熱い面を見せるようになった。どちらも本物の悠日である。

 一方、子供のころから周囲に疎まれ、孤独を噛みしめていた鈴之介も異なる面を見せるようになった。疎外感を抱かなくなり、排他的でもなくなった。両方とも鈴之介の真実だ。やはり、星砂を愛し、悠日、小鳥と友達になったから違う面が出てきた。

 人間はさまざまな面を持つ。出会った人、遭遇した出来事で見せる顔が変わる。小鳥もまた1面しかないわけではない。普段は事なかれ主義だが、好きな新人刑事・服部渚(佐久間由衣)のためとなると急変する。なんだってやる。分かりやすいリバーシブルである。

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