いつまで「食べログ」信仰を続ける? 本当に「自分に合った店」の探し方とは(中川淳一郎)

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 飲食店の口コミにおいて「食べログ」を含めた「グルメサイト」よりもグーグルの利用率が上回り、トップになったとの記事が登場しました。調査結果を紹介した「Money Voice」というサイトにはこうあります。

〈Googleが前回2020年調査の78.5%から今回は86.1%と上昇したのに対し、グルメサイトは1位だった前回78.9%から今回は61.3%と、大幅に下降している〉

 元々私はこのグルメサイトとやらは信用していないんですよ。10年ほど前、とある情報サイトから「食べログに対して好意的なことを言う取材」をされた時、「自分の好きな複数の店を高評価している人は恐らくあなたと舌が合う。その人の薦める別の店も信用に値する」と答えました。

 これが影響したかどうかは分からないのですが、「好みの合う人をフォローすると、その人のオススメのお店から探せます。」の文字が同サイトには長年表示されています。まぁその通りなのですが、自分自身の食べログの使い方を考えると、基本的には地図を見るだけなんですよね。何しろ知らない人がその時の気持ちを書いただけの口コミにそこまで信用をおいていない。

 さらに、グーグルだって今は地図を出してくれるわけだし、「グーグル画像検索」をすれば、食べログにも載っている写真をズラリと並べて見せてくれる。だったらグーグルでいいじゃん、と思うのは私としてはよく理解できます。

 あと、グルメサイトに書き込む人って目的がいくつか考えられるのですが、(1)自分が行った店を記録しておきたい人(2)本当に親切な人(3)自分がいかにいいものを食べているかを示したい自己顕示欲の強い人(4)暇人、に加え(5)不快な思いをしたことを世に訴えたい人があることでしょう。

 この中で(1)~(4)はまぁ、無害です。しかし(5)は、味は良く、金額も妥当だと感じたのに「店員が無愛想だった」「店主が常連を優先していた」「マスクをしない店員がいた」「エアコンの風が寒かった」などをベースに低評価にしてしまうわけです。

 もちろんこういったことも重要ではありますが、こうした評価は人によって解釈が変わるわけですよ。「常連を優先していた」ということは、常連にとっては最高の店でしょうよ。エアコンについても暑がりにとっては嬉しいことかもしれないし、エアコンの風が寒いのなら、席を替えてほしいとお願いすればいい。

 だとした場合、結局良い店を探したいのなら「その土地に詳しい人に聞けばいい」のであり、さらに店員に対して「〇〇さんの知り合いで、この店を推薦されたので来ました。楽しみです!」とか言えばいいのです。この二つこそ重要で、食べログ評価が2.78とかだろうが、その店はあなたにとっていい店かもしれない。

 焼肉チェーン店が、食べログが「星」を急激に下げた結果売り上げが落ちたとしてアルゴリズムの不当性を訴え、6億4千万円の損害賠償請求をした件、地裁判決では食べログの運営会社に3840万円の賠償を命じました。

 運営会社は控訴しましたが、私が思ったのは「食べログの星の数で店を決める舌音痴が多いんだな。日本人アホだ」ということです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2022年9月8日号掲載

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