フランスで「ONE PIECE」上映中に観客が大暴れ… お国柄?日本アニメの変わった“観られ方”

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過剰に興奮させるほどの魅力

 今回、観客たちはなぜ暴れだしたのでしょうか。

 はじめニュースを知った時は映画へのいやがらせなのかとも考えたのですが、拡散された動画などを見ると、どうやら楽しくてヒートアップし過ぎたようなのです。マルセイユの劇場で観客が舞台に上がり始めたのは、ONE PIECEのキャラクターたちがそれぞれの得意技を繰り広げながら一致団結して敵と戦うシーンでした。観客があげる叫びも歓喜の叫びという印象でした。

 他の観客が映画を観られないほどに騒ぐのはもちろん問題です。ただ業界側が「盛り上がって観る」ことを歓迎していた節があるのも事実。

 3年前にLe Grand Rexで行われたONE PIECE映画の試写会では、コスプレをしている観客も多く、キャラクターのパネルと撮影できるフォトブースがあったり、DJのようなノリの司会者がトークで盛り上げ、オープニング曲を一緒に歌うよう誘導していたりといった演出をしていました。スクリーンに合わせて「ONE PIECE!」と叫んだり、上映前から場内には歓声が飛び交ってボルテージが上がっていたのです。

 火災報知器事件とは別の場所での「劇場版 呪術廻戦 0」の試写会でも、キャラクターが登場すると拍手が起きたり名前を叫んだり、携帯電話の画面をライト代わりにふりまわしたりと、ライブさながらの盛り上がりだった様子です。先に紹介した「うるさかったけど最高に楽しかった」というコメントの背景も、お祭り状態になって騒ぐ習慣があるからでしょう。

 私自身も「ONE PIECE FILM RED」を観に行きましたが、試写会で観客が叫んでいたシーンは盛り上がるポイントというのがわかりました。しかも本作は「ディズニーのミュージカル映画のようだ」と評されるほど音楽シーンが多く、視覚聴覚ともに強い刺激があります。そこにファンであるキャラクターの活躍が加わったら……やはりテンションが上がりすぎて客席から飛び出してしまったのでしょう。

 行き過ぎた行為ではありましたが、そのような観客のアニメ愛?を感じたのか、配給会社Pathé FilmsのNathalie Cieutat副総支配人もこの騒動に関して、

「フランスの伝統的慣習の一部で、悪意はなく、私たちは問題にしていません」

 とコメントしています。

映画自体の評判は…

 フランスでの観客動員数100万人にも届くと予想されている「ONE PIECE FILM RED」ですが、肝心の評判をみると、動員数や話題のわりに低評価も多いようです。「ALLOCINÉ」という口コミサイトでは、15のメディアからの評価平均が5段階中の3、個人の観客からの評価平均は2.8でした。

 たとえばLe Monde紙は、星2つの評価をつけていて、

「目をよく開いてグラフィックの妙技を見逃さないように、そして甘いポップソングに耐え続ける準備をしましょう」

 とコメントしています。

 歌の事情が日仏で異なるのも一因かもしれません。日本では劇中歌をうたうのが人気歌手のAdoさんであることも話題になっており、歌も含め高評価する人も多い。一方、フランス語吹替バージョンで流れるのは、フランス人歌手・HOSHIさんのカバー版です。歌に関する日本のような話題性がないため、フランスでは歌に対する高評価が日本より少ないようです。

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