「日本がここまでロシア嫌いの社会になるとは」 ロシア好きライター・山口ミルコが明かす複雑な心境

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三角形の目を持つアレクセイ

 こうなってしまった以上、ロシア嫌われ時代はとうぶん終わらないだろう。むこう10年、20年……であるならば、やはりここで思い切って名前を変えるべきか。

 さようなら、ロシア。そして世界平和。

 この原稿が、山口ミルコ名で書く最後になる――これまでみなさまありがとうございました……って、そんなに本を出していないし、売れてもいないし。

 バイカル湖を一緒に回ったアレクセイの三角形の目を思い出している。彼は多民族国家ロシアに生きるブリヤート人。大昔からひどく風の強いこの大地に生きてきたから、ブリヤート人は三角形の鋭い目になったのだと言っていた。

 為政者が国境線を書き換えようと、目のかたちまでは変えられない。

 権力者が物語をすり替えようと、人民の記憶は残る。

 名前をやめても、国家がなくなっても、変わらないものは変わらない。

 暗雲が立ち込めていることは承知しているが、バイカル湖のアレクセイにもういちど会いたい。その日にはきっと心が晴れている。そう信じたい。

山口ミルコ
2009年からフリーライター、大学講師などをやる。著書に『毛の力 ロシア・ファーロードをゆく』(小学館)、『似合わない服』(ミシマ社)、『バブル』(光文社)ほか。

デイリー新潮編集部

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