昨年5月に比べ12倍!欧州で天然ガス価格高騰のウラ 原油、石炭への“逆流現象”も

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 欧州で天然ガス価格が再び高騰している。熱波や水不足で天然ガス以外の発電量が低下していることに加え、需要期の冬に向けてロシアからのガス供給が途絶えるリスクが拭えないことが災いしている。

 ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムは8月19日「31日から9月2日まで欧州向けガスパイプライン(ノルドストリーム)での供給を一時停止する」と発表した。ガスプロムはその理由について「唯一稼働しているタービンの計画的な保守作業を実施するためだ」としており、作業終了後の供給量は元の水準である日量3300万立方メートルに戻すと説明している。タービンなどの機器の問題でガスプロムによるノルドストリームの供給量は従来の20%にまで減少しており、「ロシアがガスを武器として利用している」との懸念が強まる欧州ではロシアからのガス供給に対する不安が一段と高まっている。

 今年1月から8月15日までの天然ガス輸出量が前年比36.2%減となった(生産量は13.2%減)ガスプロムは16日「西側諸国の制裁措置で輸出と生産が減少し続けているため、欧州の天然ガス価格は冬季にさらに60%上昇する」との見通しを示した。ロシア経済省も「今年の天然ガス輸出価格の平均は前年に比べ2倍以上に上昇する」と予測している。

 ロシア産天然ガスの最大の需要国であるドイツでも上半期のガス輸入コストは153%と急騰したことが明らかになっており(輸入量は前年比24.3%減)、欧州の天然ガス価格は現在、過去5年平均に比べ12倍と極めて高い水準にある。原油価格に換算すると1バレル=400ドルを超え、実際の原油価格の4倍以上となっている。

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