殺人犯「松井知行容疑者」が逃亡先の南アフリカで自殺するまで 一緒に逃げた女性と遺書の中身

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 日本の公安警察官は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、逃亡先の南アフリカで自殺した殺人犯について聞いた。

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 2003年10月、東京都奥多摩町の山中で飲食店従業員の古川信也さん(当時26)の切断遺体が発見された。8月11日、事件の主犯として、2004年4月に殺人容疑で国際手配されていた松井知行(当時32)が南アフリカで死亡していたことが確認された。

 南アフリカの東部に位置する都市ダーバンの海岸で、木に紐をかけて首を吊った身元不明の遺体が発見されたのは2017年12月。この遺体のDNAと、松井の親族のDNAを鑑定した結果、矛盾しないことが明らかとなったのだ。警視庁は今後、容疑者死亡のまま書類送検するという。

カード偽造グループのリーダー

「松井容疑者は、もともとカード偽造グループのリーダーでした」

 と解説するのは、勝丸氏。

「殺害された古川さんは、勤務していた東京・六本木の飲食店を辞める際、顧客名簿を持ち出したことで店とトラブルになっていました。そこへ、六本木で顔のきく松井容疑者が古川さんに接近、店を脅してトラブルを解消したのです」

 古川さんは、六本木で高級クラブを開業する予定だった。

「トラブルを解決した後、松井容疑者は古川さんに、客のカード情報を読み取り機を使って入手するよう要求したところ、拒否されたので拉致。山梨県の丹波山中で殺害し、遺体をバラバラにして奥多摩に埋めたのです」

 この時殺されたのは、古川さんだけではなかった。

「カード偽造グループに関わっていた元スナック経営の男性も松井容疑者と金銭トラブルになり2003年5月に殺害され、遺体は埼玉県長瀞町の山林に埋められました」

 2人の殺人事件に関わったのは、松井を含め当時10代~30代の11人の男女。2004年1月、警視庁はそのうち8人を逮捕した。残りの3人は松井、グループナンバー2の紙谷惣、当時19歳の女性だった。3人は事件直後にハワイに出国し、その後南アに入国したという。

「彼らが南アに入国したのは、現地に日本で連絡を取り合っていたカード偽造団がいたからです。松井容疑者たちは、カード偽造団が不正行為でかなり儲けていたため、プール付きの豪邸で暮らしていました」

 実は、松井と共に南アに入国した女性は、殺された古川さんの交際相手だった。

「松井容疑者はカリスマ的な存在で、誰も逆らえなかったのです。古川さんを殺害、バラバラにするときも女性は手伝わされています。そして『お前は共犯者だ』と松井容疑者から脅され、南アへ半ば無理やり同行させられたのです」

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