「刺し身」を載せた蕎麦やそうめんは、夏の新定番になるか

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地元でもなかった「半田そうめん」と魚のコラボ

 魚好きの店主は、これまで多くの魚介類を半田そうめんに合わせてメニュー化し、リピーターを獲得してきた。店主の田中嘉織さんによると、「地元の徳島では、そうめんと魚を一緒に食べることはほとんどなかった」というが、十数年前に(当時は東中野駅前に)店を開業して以来、「自慢の半田そうめんに、どうやって魚を合わせられるか常に考えてきた」と話す。
 
 同店ではこれまで、マグロやカツオをしょう油ベースのたれに浸した「漬け」のほか、マダイのユッケ、ヒラメのマリネなど、新鮮な魚にひと手間加えた料理をそうめんに載せて振る舞ってきた。肉や野菜を使ったメニューも数多く手掛けているが、魚介を使ったそうめんレシピだけで150種を超えるのだとか。

 つゆは「母親譲りのカツオやコンブ、ニボシなどで取っただしをベースに、徳島の薄口しょうゆで味を調えて作る」(田中さん)。夏はもちろん、冷え冷えのつゆをかけて提供。冬場やリクエストに応じ、温かいつゆでもいただくことができる。

 常に新たな味を模索する田中さん。8月上旬に新大久保で開催された三陸の名産・ホヤにちなんだイベントに参加し、「ホヤの水刺し身そうめん」を販売した。半田そうめんを韓国の冷麺風にアレンジし、ホヤと野菜にコチジャンベースのたれをかけて提供。こちらもかなりの人気商品となったようだ。

 さらに8月中旬には、マグロやイカ、マダイ、タコ、サーモンなど、多種類の刺し身をカットして散りばめた「海鮮そうめん」を限定販売し、好評だったという。夏も冬も、日本の麺類に刺し身。これまでなかったのが嘘のように、定番メニューに近付いていくかもしれない。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。

デイリー新潮編集部

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