県岐阜商がコロナ集団感染で「無念の大敗」 そこに見えた高校野球の“重すぎる課題”

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エースや正捕手が不在

 3年ぶりに観客制限なしで行われている夏の甲子園だが、新型コロナウィルス感染拡大の影響は依然として続いている。【西尾典文/野球ライター】

 浜田(島根)、帝京五(愛媛)、有田工(佐賀)、九州学院(熊本)で集団感染が起こり、初戦の日程が変更された。さらに、組合せ抽選後には、県岐阜商(岐阜)と九州国際大付(福岡)で複数の部員の感染が分かり、この2校についてはメンバーを入れ替えて試合に臨むこととなった(8月11日現在)。

 不運に見舞われたチームの中で、最初に登場したのが県岐阜商である。ベンチ入りメンバーの10人を入れ替え、エースや正捕手が不在の中で、8月9日の大会第4日に社(兵庫)との対戦に臨んだが、選手の経験不足は明らかで1対10で大敗した。

 県岐阜商・鍛治舎巧監督は、試合後のインタビューで、以下のように話している。

「大会前に2度、責任教師の方に私から辞退しようかという話をしました。ただ、まだ残って頑張っている3年生がいたので、彼らのことを考えると、自分で幕を引くわけにはいかないと思い直して、チームを編成し直して臨みました。出場できなかった選手の中には、無症状の選手や回復している選手もいたので、何とか彼らのためにも勝ち進みたかったのですが、それがかなわずに申し訳ないという気持ちです」

メンバー外だった選手の高いポテンシャル

 昨年の宮崎商(宮崎)や東北学院(宮城)のように出場辞退ということを避けられたのは不幸中の幸いだが、ベストメンバーであれば、試合展開が大きく異なっていたことは間違いない。それを考えると、鍛治舎監督のみならず、県岐阜商の選手、関係者全員に残念な気持ちが残った大会だったと言えるだろう。

 ただ、そんな大差となった試合の中で、“異なる一面”が見られたことも事実である。それは、本来はメンバー外だった県岐阜商の選手が高いポテンシャルを持っていたということだ。

 社戦で登板した5人の投手が記録したストレートの最速をまとめると、山口恵悟(2年)が137キロ、小林希(2年)が145キロ、古賀暖人(3年)が142キロ、池田諒真(1年)が132キロ、森厳徳(1年)が138キロをそれぞれマークしている。投手の能力は球速だけではないとはいえ、2人の主戦投手を欠きながら、これだけ速いボールを投げられる投手がいることに驚いたファンも多かったはずだ。

 この5人の中で岐阜大会に登板したのは、山口と小林のみで、ともに1試合、2イニングの登板にとどまる。三番手で登板して4回1/3を投げて1失点と好投した古賀は、今夏で初登板だった。下級生は、秋以降に活躍の機会はあるものの、3年生の古賀は、今回のような事態がなければ、彼が持つ能力の高さが日の目を見ることはなかっただろう。

 一方、野手は、岐阜大会でベンチに入っていなかった高橋一瑛(2年)と高井咲来(2年)がともに鋭い当たりを連発し、高橋は1安打、高井は2安打をそれぞれ記録した。彼らは来年のレギュラー候補かもしれないが、そのプレーは、ベンチ外のメンバーとは思えない高いレベルだった。

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