県岐阜商がコロナ集団感染で「無念の大敗」 そこに見えた高校野球の“重すぎる課題”

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高校野球界の“厳しい現実”

 このように、控えの選手が思わぬ出場機会を得たことで活躍するシーンは、高校野球の世界では珍しいものではない。2015年の選抜高校野球、準決勝の大阪桐蔭対敦賀気比戦では、敦賀気比の「背番号17」をつけた松本哲幣が、大会史上初となる2打席連続満塁ホームランを放ち、春夏通じて初となる北陸県勢の全国制覇に貢献している。

 ただし、このような現象は、公式戦での出場機会に恵まれず、才能を生かし切ることができない選手が星の数ほどいるという、高校野球界の“厳しい現実”を現している。

 県岐阜商は、県立高校でありながら、県内随一の伝統校で88人の部員が在籍しているが、今大会に49の出場校の中で、在籍部員数が際立って多いわけではない。最も多い高校は、174人の八戸学院光星(青森)を筆頭に、10校が100人以上の部員を抱えている。もちろん、これだけの部員がいるチームとなれば、3年間に一度も公式戦に出場しないまま、高校野球生活を終える選手も珍しいことでない。

1校から複数のチームが出場できる大会

「ご存知の通り、高校野球の公式戦はトーナメント制ですから、いろんな選手を試すことは難しいですね。投手であれば、試合を作れるコントロールが安定した選手、野手であれば、ミスが少ない選手が求められる。『投げるボールは速いけれど、投げてみないと分からない』、『長打力はあるけれど、守備が不安定』といった選手はどうしても使いづらい。部員が多い学校は『Bチーム』、『Cチーム』を作って、練習試合を増やしていますが、それでも十分に出場機会がないケースもあります。また、部員の数の割に指導者が多くはなく、目が行き届かないということもよく聞きます。部員数の制限をしたくても、私立の学校は経営のために、多くの生徒が欲しいから現実的ではない。今の仕組みのままでは、部員数の多いチームで、全員にチャンスを与えることは簡単ではないと思います」(現役の高校野球指導者)

 部員数の制限が難しいのであれば、筆者が提案したいのが、1校から複数のチームが出場できる大会を作ることだ。具体的には、毎年3月から6月に全国各地で行われる春季大会は、甲子園出場に繋がらない大会であるため、現在の方式を変更するにはうってつけと言えるだろう。このほか、選抜高校野球出場の選考基準となる秋季大会で、早々に敗れたチームは次の公式戦までかなりの期間が空く。このため、敗れたチームを対象に、新たな大会を作るのも面白いかもしれない。

 この夏、甲子園球場の記者席で、県岐阜商の控えメンバーの奮闘を見ながら、高校野球界が取り組むべき“重い課題”を痛感させられた。高校野球関係者には、チームに埋もれている高校球児が活躍できる場を作ることを検討して頂きたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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