「老人ホームは現代の姥捨て山」 利用者が気を付けるべき施設の「キラーワード」は? プロが明かす

ドクター新潮 介護 その他

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「安かろう、悪かろう」が常識

 現代においては、老人ホームへの入居を検討する親を持つのは、子どもといっても50代であることがザラです。彼らは役職定年や早期退職、子会社への出向が迫り、同時にまだ自らの子どもが中高生であることも多い。

 そうした「50代の子ども世代」にとって、親の老後を心配している余裕はなく、自分の老後の不安のほうが大きかったりします。ですから、その状況で親が数千万円も使うことに忌避感を覚え、親の老人ホームへの「早期自主入居」を許そうとしないのです。

 早期自主入居とは違い、子どもが選んだ老人ホームに親を入居させる場合も、同様の金銭的事情から「高いホーム」ではなく、できるだけ「安いホーム」を子どもたちは選ぼうとする傾向があります。マンパワーがものを言う老人ホームでは、運営費の50%以上を介護看護職員の人件費が占める施設が多い。したがって、「安かろう、悪かろう」が老人ホーム業界の常識なのですが……。

老親を「所有物」と勘違い

 しかし、この点で子どもを責めることはできないでしょう。自分の老後と子育てに不安が残るなか、親に金をかけている場合ではないというのは、超高齢社会に突入している日本の、紛う方なき現実なのですから。これは「子どもたちの問題」ではなく、明らかに「社会政策の問題」です。

 金銭的事情に加えて説明すると、年老いた親の面倒を見ているのは自分だという自負から、潜在的に老親の「監督権」は子どもにあると思いがちです。つまり、老親を子どもの「所有物」であるかのように勘違いする。そのため、老人ホームを選ぶのは当然子どもであるべきだと思い込む。将来、自分自身が老親となった時に子どもに「所有」されたとしたらどんな思いを持つのかということには、なかなか想像が及ばないようです。子どもがいれば、若くして死なない限り誰もが必ず老親になるのですが……。

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