「老人ホームは現代の姥捨て山」 利用者が気を付けるべき施設の「キラーワード」は? プロが明かす

ドクター新潮 介護 その他

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「最後まで面倒を見ます」

 私が施設で働いていた現役当時から、親を入居させるか否か迷っている家族に対して使われてきた“キラーフレーズ”があります。

「親御さんがどうなったとしても、私どもが最後まで面倒を見ます。途中で放り出したりしません。ですからお任せください。うちに決めてください」

 老人ホーム側からこう言われた家族は、まず間違いなく安心して、「よろしくお願いします」と頭を下げます。

 しかしこのフレーズには、ふたつの側面から大きな問題があるといえます。

 まず家族、多くの場合は子どもですが、彼らがこの言葉にグラッときて、ホッとするのはなぜか。有り体に言うと、まかり間違っても親が自宅に帰ってくることがあっては困るからです。認知症等になり、介護を要する状態となった親を、これ以上、自分でケアすることはできない。したがって、「最後まで面倒を見ます」と言われると、本音では「助かった」と思う。そして、口説かれるがままにその老人ホームに親を入れる。

 親の世話をすることや介護から解放されたいという気持ちは理解できますが、「最後まで面倒を見てくれるから預ける」という発想は、やはり究極的に言えば姥捨て山と大差ありません。その後、親の状況がどう変化するか分からないのに、その老人ホームに入れっぱなしにすることを決めてしまっているわけですから。

老人ホーム側の本音

 一方、老人ホーム側にも問題があります。

「最後まで面倒を見ます」

 一見、誠意に基づいた「心」からの言葉のように思えますが、ホームの本音はこうです。

「入居者がいなければ介護保険報酬(介護報酬)を受け取れない。せっかく一度受け入れた入居者を、おいそれと簡単に手放すわけにはいかない。だから何としてでも最後までいてもらう」

 厳しい解説になりますが、これがキラーフレーズの“意味”なのです。

 子どもと老人ホーム、両者の本音に決定的に欠けているのは、入居者本人がいかに快適に過ごせるかという観点です。なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。

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