「リブゴルフ」にビッグマネーはあっても“自由”は無かった 初の法廷闘争はPGAツアーの完勝

スポーツ

  • ブックマーク

Advertisement

 8月9日、長年にわたり世界最高峰の男子プロゴルフツアーとして君臨してきた「PGAツアー」と、サウジアラビアの政府系ファンドをバックに付けたグレッグ・ノーマンが今年6月に創設した新ツアー「リブゴルフ」との初の法廷闘争に決着がついた。とりあえずPGAツアーに軍配が上がり、米ゴルフ界には安堵と歓喜が溢れ返った。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】

まずは3選手の裁判

 PGAツアーに背を向けリブゴルフへ移籍したフィル・ミケルソンをはじめとする11名の選手が、自分の意思でPGAツアーから去ったにもかかわらず、PGAツアーから科された資格停止処分の取り消しを求め、PGAツアーを反トラスト法(独占禁止法)違反として提訴したのは8月3日(米国時間)のこと。

 11名のうちの1名、カルロス・オルティスはその後に訴えを取り下げ、現在の提訴組は10名に減っている。

 そのうちのテーラー・ゴーチ、マット・ジョーンズ、ハドソン・スワッフォードの3名は、今月11日開幕のPGAツアーのシーズンエンドのプレーオフ・シリーズ第1戦「フェデックス・セントジュード選手権」への出場許可を求める仮処分(資格停止処分の仮差し止め命令)を申請している。

 その審問が9日に米カリフォルニア州内の連邦裁判所で開かれ、今回は反トラスト法違反を問う全体部分は保留し、3名の申し立て部分のみの正当性や妥当性が審議された。

 結果、リブゴルフ選手3名の申し立ては完全に退けられ、法廷における初のバトルはPGAツアーの勝訴となった。

取り返しはつかなくない!?

 そもそも、プレーオフ第1戦のフェデックス・セントジュード選手権に出場できるのは、PGAツアーの年間を通じたポイントランキングであるフェデックスカップ・ランキングで125位以内の選手のみとされている。

 申し立てをした3名は、自分たちがリブゴルフへ移籍した今年6月の時点では125位以内に位置していたことを理由に、「本来なら自分たちはプレーオフ第1戦に出場できたはず」「出場できなくなると、将来も含めて、取り返しのつかない多大なる損失をこうむる」と訴えていた。

 しかし、連邦裁判所のベス・ラブソン・フリーマン判事は「3選手が主張している『多大なる損失』の中身が、お金のみをさすのだとしたら、それは『取り返しがつかない』損失にはなりえない。なぜなら、お金の損失は、後日支払われることで補填可能だから」と前置きした上で、「プレーオフに出られないことが彼らの将来的な金銭収入に影響するという訴えは、すでに彼らがリブゴルフから受け取っている高額なマネーによって十分に相殺されうる」と切り捨てた。

 さらに、3名の選手は、プレーオフ第1戦の開幕直前というタイミングを理由に、仮処分を求める「緊急性」も主張しているが、フリーマン判事は、リブゴルフへの移籍をプレーオフ終了後まで待てなかった理由を問うた。それに対し3選手は、「そこまで待っていたら、リブゴルフの定員が埋まってしまって自分たちは移籍できなくなった」と返答したそうだ。

 しかし現在でも、今年の全英オープン覇者キャメロン・スミスや、スミスと同じオーストラリア出身のマーク・レイシュマンが、プレーオフ終了後にリブゴルフへ移籍するという噂が出回っている。そうした現状を鑑みると、6月ごろの段階でリブゴルフの「定員が埋まる」という主張は矛盾しており、フリーマン判事は「緊急性があるとすれば、その緊急性は選手たち自身が招いたもの」として、彼らの訴えを全面的に退けた。

 結論として、法廷における初の審問は、PGAツアー側の完全勝訴となった。

次ページ:鮮やかな指摘、胸のすく判決

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。