「リブゴルフ」にビッグマネーはあっても“自由”は無かった 初の法廷闘争はPGAツアーの完勝

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鮮やかな指摘、胸のすく判決

 審問における具体的なやり取りの一部を、米ゴルフウィーク誌が報じた。その内容を見て、フリーマン判事の指摘がとても見事で鮮やかだったことに惚れ惚れさせられた関係者は少なくなかったことだろう。

 フリーマン判事は、まず仮処分を申請した3名が、これまでPGAツアーで稼いだ生涯獲得賞金(ゴーチ950万ドル、ジョーンズ1800万ドル、スワッフォード1000万ドル)より、はるかに高額な契約金をリブゴルフから受け取ったことを明らかにした。その上で、そうしたビッグマネーは、彼らが主張する損失を補って余りあると判断した。

 さらに判事は、リブゴルフとPGAツアーの双方が各々の選手と交わしている契約書を比較した上で、リブゴルフの契約書のほうが格段に選手に対する制約が多いことを指摘した。

 来季、リブゴルフは年間14試合あり、全試合への出場が選手には義務づけられている。すでにノーマンの傘下にあるアジアツアーの大会への出場も推奨(もしくは義務化)され、今後、リブゴルフ選手のメジャー4大会への出場が認められれば、その4試合がさらに加わり、年間試合数は20試合に近づいていく。

 一方のPGAツアーは年間義務試合数が15試合とされており、その15試合にはメジャー4大会も含まれている。そしてその15試合は、年間47試合の中から各々の選手が自由に選択することができる。つまりPGAツアー選手は、出たい試合を自由に選んで、最低15試合をクリアすればいい。

 こうした比較検討に基づき、フリーマン判事は、リブゴルフ選手たちの「PGAツアーの独裁的な力によって過密スケジュールを強いられた」といった主張を否定。

 そして、PGAツアーが反トラスト法違反かどうかを問う全体の審議を、今回は行なわない前提であることに言及した上で、「現実としてリブゴルフがすでに創設され、トッププレーヤーたちを呼び込み、実際に3試合が開催され、大勢の観客も集めたという事実をもってすれば、PGAツアーが独占的・独裁的な力でリブゴルフの活動を不当に阻害しているとは言い難い」と結論づけた。

 PGAツアーを率いるジェイ・モナハン会長や、ビッグマネーの誘惑を振り切ってPGAツアーに残っている選手たちにとっては、本当に胸がすく判決だったと言えそうである。

今後は「超」長期戦

 今回の結果を受け、リブゴルフ側は「ゴルファーを戦いの場から疎外することは、誰の利益にもならない」とする声明を出し、落胆を露わにしている。

 一方、勝訴したPGAツアーのモナハン会長は、選手たちに回したメモの中で、「この知らせを受けて、選手もファンもスポンサーも、(プレーオフ3試合が行われる)これからの大事な3週間にきっちり集中できる」と喜びを語った。

 フリーマン判事によると、PGAツアーが反トラスト法違反かどうかを審議する全体の公判は、早くても2023年8月になるとのこと。それまでにもしも双方の準備が整わないなどの事情が発生した場合は、連邦裁判所のスケジュールはすでにぎっしり詰まっているため、2025年まで公判はずれ込むことになるという。

「超」がつくほどの長期戦が予想されるが、すでにPGAツアーを支持する人々の間からは、「それまでリブゴルフは存続しているだろうか?」「このマッチ、まずはPGAツアーが見事な1アップだ!」などと戦勝ムードに沸いている。

 完全解決までには長い時間がかかるとしても、「正義は勝つ」というフレーズが実現される結果を期待したい。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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