ちむどんどん・賢秀役の「竜星涼」がフジ「連ドラ」で初主演へ 原作は超人気漫画

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賢秀役への反響は「役者冥利に尽きる」

 むしろ賢秀役を演じることによって茶の間での竜星の認知度は間違いなく高まった。ほかの朝ドラより低めとはいえ、連日15%前後の世帯視聴率と9%前後の個人全体視聴率を得ているのだから。これだけの視聴率をプライム帯で得るのは至難だ。

 竜星自身、6月10日のNHKの情報番組「あさイチ」に生出演した際、「(賢秀役への大きな反響は)役者冥利に尽きる」と神妙な面持ちで語った。自分の演じている役柄が連日話題になることを誇らしく思わない俳優はいない。

 番組内で竜星は賢秀役の演技について、「振りきって、うざい芝居を目指しています」と明かした。嫌われるのは覚悟の上なのである。

 当たり前だが、竜星は賢秀とは全く違うキャラの男も演じられる。代表作の1つである映画「泣き虫ピエロの結婚式」(2016年)では志田未来(29)が演じる見習いピエロと恋に落ちる余命短い繊細な青年を演じた。観客席が大泣きの作品だった。

 賢秀役を演じたことによって竜星のドラマ界での評価は上がったのではないか。救いようがないキャラである賢秀役を、なんとかここまで視聴者に観せてきたのだから。賢秀役のキャスティングを間違えていたら、この朝ドラはもっと火だるまになっていたはず。明るいダメ男が演じられ竜星の起用は正解だった。

「ちむどんどん」の放送は9月30日まで。主演連ドラの放送開始まで1クール(3カ月)空く。これは視聴者にも竜星にも良かったはず。インパクトが強い賢秀が放送終了から間もなく違う役で画面に現れたら、さすがに違和感を拭えないだろう。

「ちむどんどん」関係者も既に竜星がプライム帯の連ドラに初主演することは知っている。祝福を受けたという。

 竜星は2009年、16歳の時に東京・原宿の竹下通りでスカウトされた。スカウトの黄金地帯である。

 翌2010年にはフジの連ドラ「素直になれなくて」で上野樹里扮する私立高講師の教え子役でデビュー。2013年にはテレビ朝日のスーパー戦隊シリーズ「獣電戦隊キョウリュウジャー」に桐生ダイゴ(キョウリュウレッド)役で主演した。今は賢秀で残念な存在だが、元ヒーローなのだ。

 以降、朝ドラ「ひよっ子」(2017年度上半期)や日本テレビ「35歳の少女」(2020年)などに出演してきた。「35歳の――」では柴咲コウ(40)が扮した主人公の実父(田中哲司、56)の継子を演じた。整形手術のための費用100万円を要求する暗く鬱屈した青年で、賢秀とは懸け離れていたが、これもハマっていた。役柄の幅は広い。

 賢秀が「沖縄の一番星」になれる可能性は今のところ限りなくゼロだが、竜星は星を掴みかけている。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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