田中将大は「一番印象に残っている試合」と回想 夏の甲子園で起きた“奇跡の大逆転劇”

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打ち込まれた徳島商時代の川上憲伸

 連日熱戦が繰り広げられる夏の甲子園。大差でリードされ、敗色濃厚だったチームが終盤の猛反撃で“奇跡の逆転劇”を演じるのも、高校野球の醍醐味と言えるだろう。今回は、最後の最後までファンを興奮させた記憶に残る大逆転試合を振り返ってみたい。【久保田龍雄/ライター】

 7回を終わって0対7。地方予選ならコールド負けになってもおかしくない大劣勢からミラクル逆転劇を演じたのが、1993年の徳島商である。

 2回戦の岩手代表の久慈商戦。徳島商は、プロ注目の140キロ右腕・川上憲伸(元中日など)が初回にスクイズと連続タイムリーで、いきなり3失点を喫してしまう。さらに、2回にも自らの失策をきっかけに2つの犠打で1点を追加されたあと、5回にも3安打を集中されて2失点と、「県大会でも記憶にない」ほど打ち込まれた。

 これに対して、徳島商打線は、久慈商の左腕・宇部秀人の変化球を巧みに配して打たせて取る術中にはまり、6回まで散発の4安打とゼロ行進を続ける。勢いに乗る久慈商は7回にも4番・柴田朋弘の三塁打と犠飛で1点を加え、7対0。これで勝負あったかに思われた。

「1イニング7得点」で同点に

 ところが、久慈商が8回2死満塁のチャンスを逃したのを境に、流れは一気に徳島商に傾くのだから、野球は“ミステリー”である。

 その裏、徳島商は1死から高松俊輔の二塁打を口火に怒涛の6連続長短打で一気に2点差まで追い上げると、なおも2死一、二塁で、利光恵司のライナー性の飛球を左翼手が雨に濡れた芝生に足を取られて転倒する間に2者が生還して同点。1イニング7得点で同点に追いついたのは、61年の報徳学園の「6」を上回る大会新記録だった。

 こうなれば、徳島商ペース。ようやく本来の調子を取り戻した川上が9回の久慈商の攻撃を簡単に3者凡退で切って取ると、その裏、先頭の佐藤圭司が三ゴロエラーで出塁。1死後、清水慎也の安打で一、二塁とチャンスを広げたあと、平山貴郎が左中間を破り、8対7とサヨナラ勝ち。九死に一生を得て初戦を突破した徳島商は8強入りをはたした。

 一方、あと5人で甲子園初出場初勝利という場面から一転悪夢の大逆転負けに泣いた宇部は「甲子園は何が起こるかわからないところでした」と語っている。

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