欧米はウクライナになぜ「HIMARS」や「NASAMS」をもっと供与しないのか

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反攻は侵攻と同じ

 6月反攻が幻に終わった理由として、西側諸国の兵器がウクライナ軍の手元に輸送されるのが遅くなったため、との報道は少なくない。

 HIMARSを代表として、いよいよ西側の武器がドネツク州に集結しつつある、との分析が、「ドネツク反攻」の根拠になっているようだ。

 しかしながら、軍事ジャーナリストは「今のところ、ウクライナ軍が反攻に転じる可能性は低いと思います」と言う。

「例えばHIMARSです。極めて高性能な兵器であることは言うまでもありませんが、アメリカがウクライナに供与したのは僅か4基です。23日に追加支援が発表されましたが、やはり4基でした。『HIMARS供与』と報じられるとウクライナ軍の戦力が劇的にアップするかのような印象を受けます。しかし、合計8基では、戦局を一変させるだけの影響力はありません」(同・軍事ジャーナリスト)

 アメリカを筆頭に欧米各国は、ウクライナ軍が強くなりすぎないよう“コントロール”している可能性があるという。

「“反攻”という言葉には注意が必要です。ロシア軍が占領しているルガンスク州を攻撃することを意味するわけですから、要するにウクライナ軍が“侵攻”することになります。一般的に、防衛と比べ攻撃は、作戦の難易度が格段に上がります。それほどの作戦を行うだけの支援を、アメリカが行っているとは思えないのです」(同・軍事ジャーナリスト)

アメリカの“欺瞞”

 侵攻の当初、ロシア軍は首都キーウ(旧キエフ)の制圧などに失敗した。最大の理由として専門家が口を揃えたのは「戦力」だった。

「通常、自軍が攻め込むためには、守る敵軍に対して3倍の戦力が必要だとされます。ロシア軍は最初、北、東、南と3方向から攻撃を行ったため、ウクライナ軍と戦力差を生み出すことができず、猛烈な反撃を受けました。今回、ウクライナ軍が安易に反攻を企図すると、ロシア軍と同じ轍を踏む危険性があります」(同・軍事ジャーナリスト)

 ウクライナ軍がロシア軍の3倍の戦力でルガンスク州に攻め込むなら、反攻は可能かもしれない。だが、そんな戦力はない……。

「ウクライナはもともと小国ですから、それほどの戦力があるわけではありません。ウクライナ軍も戦死者がかなりの数にのぼっているほか、命令不服従や脱走も相次いでいると言われています。頼みはアメリカですが、ロシア軍を圧倒するような支援策は、慎重に避けている印象です」(同・軍事ジャーナリスト)

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