欧米はウクライナになぜ「HIMARS」や「NASAMS」をもっと供与しないのか

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 ウクライナ軍の反攻は、いつになったら始まるのか?──そう思いながら、国際ニュースを閲覧している人は多いかもしれない。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)は「6月反攻」を宣言していたが、ロシア軍の猛攻にウクライナ軍は敗走を重ねている。

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 かつてはウクライナ軍の圧勝が報道されていた。例えば共同通信は5月22日、「ウクライナ、反攻に自信 東部激戦、占領地ロシア化」の記事を配信した。

《ロシアのウクライナ侵攻から24日で3カ月。欧米の武器支援本格化を受け、ウクライナ軍は今月、東部ハリコフ州でウクライナ第2の都市ハリコフ周辺の集落をロシア軍から次々と奪還した。ゼレンスキー大統領は21日、侵攻前の状況に戻せば「勝利」との認識を表明。政権内ではロシアが2014年に強制編入した南部クリミア半島の解放も目指すとの声が上がるなど反攻に自信を深めている》

 当時の報道では、ウクライナ軍がロシア軍を追い出す可能性が取り沙汰されていたことが分かる。担当記者が言う。

「欧米の最新兵器をウクライナ兵が操作できるよう、ポーランドなどで訓練が行われていました。訓練の完了が6月中と言われ、この頃には欧米提供の兵器や弾薬が集積される可能性も高かったことから、欧米や日本のメディアが『6月反攻』を報じていたのです」

 だが、最新の状況は違うようだ。

ドネツク州は要塞化

 ロシア軍はルガンスク州とドネツク州を合わせた「ドンバス地方」の完全制圧を目指している。

「ロシア国防省は7月3日、ルガンスク州の完全制圧を発表しました。残るはドネツク州だけとなり、既に侵攻を開始していると見られています。一方のゼレンスキー大統領もビデオ演説でルガンスク州から軍が撤退したことを認めましたが、アメリカから供与された高機動ロケット砲システム『HIMARS(ハイマース)』で反撃すると強調しました」(同・記者)

 ウクライナ軍が集結するドネツク州から、いよいよ反攻が始まる──と報じるメディアも少なくない。

 AP通信(日本語・電子版)は7月6日、「ウクライナ軍カエサルを投入 ドネツク州でロシア軍に反撃」との記事を配信した。

《西側諸国から供与された長距離砲やロケット砲が順次戦線に投入されており、ウクライナ軍の反撃が始まろうとしている。/その一つが、フランスから供与された52口径155ミリ装輪式自走榴弾砲「カエサル」だ》

 産経新聞は5日、「ドネツク州要衝『既に最前線』 次の主戦場スラビャンスク、露軍の接近に緊張」との記事を配信した。

《ドネツク州ではウクライナ側がスラビャンスクやクラマトルスクなど主要都市を含む45%を保持している上、州内を要塞化しており、露軍による早期制圧は困難だとの見方が強い》

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