中国激怒で訪台「ペロシ」を“老妖婆”呼ばわりも、3期目続投を目指す「習近平」がほくそ笑む理由

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 8月2日、ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を“電撃”訪問したことで、米中間の緊張が高まっている。「主権を侵害された」と猛反発する中国は、台湾周辺海域で軍事演習を始める示威行動に打って出た。しかし、そのウラで習近平・総書記(国家主席)は今回の“危機”を政治利用する策力をめぐらせているという。

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 現職の下院議長としては25年ぶりの訪台を果たしたペロシ氏は3日、台湾の蔡英文総統と会談。そのなかで「米台が団結することが非常に重要だ。それを外部に示すため訪台した」と語り、ロシアのウクライナ侵攻で“第2の火薬庫”と目される台湾への統一圧力を増す中国を牽制した。

 対して、中国の王毅外相は「中国を犯すものは必ず罰せられる」と強い警告を発し、中国国防省も「軍事行動で対抗する」と非難声明を出すなど、強硬姿勢を際立たせている。

「中国メディアも“ペロシ訪台”には批判一色で、共産党機関紙傘下の『環球時報』は社説で“反撃は一度きりでなく、長期に揺るがず、着実に行動を伴う”とあからさまに台湾を威嚇したほど。訪台は祖国統一を“歴史的任務”と位置付ける習近平政権の虎の尾を完全に踏んだと見られています」(全国紙外信部デスク)

 ペロシ氏は会談後に台湾を発ち、3日夜に韓国に到着。4日夜に訪日し、岸田首相と5日に会談する予定だ。しかし、この間にも中国は台湾に対する軍事的な威圧をエスカレートさせている。

始まった実弾軍事演習

 台湾国防部の発表では3日、20機以上の中国軍戦闘機が台湾と中国の軍事的境界線である「中間線」を越えて侵入。4日午後からは台湾を取り囲む複数の海域で実弾を用いた大規模な軍事演習が開始された。

「中国もアメリカといま戦争を行うつもりはないが、威嚇が激しくなるにつれ、台湾との間で偶発的な軍事衝突が起こる危険性が高まっています」(同)

 一方、今回の危機醸成は「習近平政権の“演出”の部分が多分にある」と話すのは中国事情に詳しいシグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏である。

「今回の訪台を中国側が本気で激怒しているかといえば、そうとも言い切れない。訪台そのものがペロシ氏の政治的パフォーマンスに過ぎないと見抜いており、また訪台を受けてアメリカ政府が“米国は台湾独立を支持しない”などと改めて表明したことで、すでに“お釣りがくる”ほどの実利を得たとも考えています。なぜなら今回、アメリカの『ひとつの中国』政策は不変であるとの言質を取ったことになるからです」

 そればかりでなく、「ペロシ訪台」は習近平の権力基盤を強化する方向にさえ動いているという。

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