「1万8000人」感染でWHO「緊急事態宣言」 「サル痘」を巡る疑問を専門家に訊いてみた
コロナ禍が収まりを見せない中、新たな病がまた日本に上陸した。7月25日、国内で初めて「サル痘」の感染者が確認されたのだ。サル痘は、2022年5月頃から欧米を中心に感染が拡大。WHO=世界保健機関が、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、警戒を呼びかけていたのだが――。
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社会部記者が言う。
「国内初の感染者は、6月下旬にヨーロッパに渡航していたという東京都内30代男性でした。現在は医療機関に入院中で、容体は安定しているとのことです」
そして、その直後の7月28日には、早くも2例目が報告された。
「今度は、北中米在住の30代男性。7月下旬に日本へ一時帰国した際、症状が出て医療機関を受診して発覚しました。国内での感染ではなく、居住地で感染したのちに帰国したと見られています。こちらも都内の医療機関に入院中で、容体は安定しているようですが、帰国後に接触した人物がいるそうで、担当する都は感染拡大を警戒しています」
サル痘に感染すると、平均12日間の潜伏期間を経て、発熱、強い頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛、強いだるさを伴って発症。さらに、顔や手足、生殖器、口の粘膜など、全身に水膨れができ、10日ほどでかさぶたになるという。特効薬はなく、対症療法での治療となる。
そんなサル痘だが、果たしてどんなウイルスで、どのように警戒すればいいのか。さらに、日本での感染拡大の可能性はあるのか――。長年、サル痘について研究を進めてきた、札幌市保健所の西條政幸医療政策担当部長に訊ねた。
――サル痘というからには、サルの持つウイルスなんですか。
「実はサル痘ウイルスは、アフリカの中央部とか、西アフリカに生息するねずみなど、げっ歯類が持つウイルスなんですよ」
――では、なぜサルの名が冠されたのでしょうか。
「1950~60年代に、アフリカからヨーロッパに実験用のサルを輸入したときに、ある個体が、天然痘に似た症状を起こしていた。その個体を調べると、このウイルスが発見されたため、サル痘という名前がついたというだけです。つまりこのサルも、もともとはねずみから感染していた、というわけです」
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