記者が見た第7波直撃の「フジロック」”大声禁止”でも酒が入れば絶叫してしまう中高年たち

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9割はマスク着用

 午後四時過ぎ、屋根付きのステージ「レッドマーキー」を覗くと、韓国人DJ「Night Tempo」の演目中だった。レッドマーキー入り口では、係員がマスクを着用するよう呼びかけていた。

 今年の観客がどのくらいマスクをしているかも注目すべき点であった。結論から言うと9割方はどんな場面でも装着していた。熱中症よりも人目。いまだ街中で律儀にマスクを付けている日本人そのものといった風景である。

 昨年気になった“密”については、それほど変わりない。足元に目安として貼られたソーシャルディスタンスの印には誰も気にとめていないが、自主的に間隔は開けている。ステージの目の前だけは、どうしても密集してしまうという感じだ。

 あたりが暗くなっていくに連れて、会場はどんどん人で膨れ上がっていく。そして午後8時過ぎ、メインステージにトリのアメリカ人ロックバンド「VAMPIRE WEEKEND」が登場すると、いよいよ宴もたけなわとなった。

いつものフジロックが帰ってきた

 だが、出だしから大ハプニングが……。突然、スピーカーの接続不良で演奏が聞こえなくなってしまったのだ。「ゴメンナサイ、チョットマッテネ」と演者が退場し、15分ほど間が抜けた中断。だが、中高年が中心の観客は冷静だった。

「オマタセシマシタ」

 ボーカルが戻ってくると、モッシュピットは「キャー!」。もはや今年のお題目の「大声禁止」は記憶の彼方に。体を揺らし、手を振り上げ、声を枯らす中高年たち。

 帰り際に声をかけた37歳の女性会社員は、「ようやくいつものフジロックが戻ってきましたよ!」と興奮して言った後で、こう言い直した。

「でも、昔と同じようには戻らないんだとも感じました。ちょっと羽目を外すことは出来ても、ダイブしたりの乱痴気騒ぎはもうないんだなと。嬉しいけど、ちょっぴり寂しい気持ちです」

 こうして苗場スキー場の長い夜は明け方まで続いたのである。

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