「契約の自由」を侵害するNHKの「割増金徴収」 次はネットでも受信料?

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誘導尋問的アンケート

 では、NHKが放送ではなく、動画配信に移り、こちらで今まで通りの受信料を取ることは可能なのか。NHKはどうもそのつもりらしい。テレビを持たない人や見ない人にインターネットを通じて番組や情報を提供する実証実験を行ったあとの6月2日にその結果を発表したとき、前田晃伸NHK会長は、翌日の産経新聞によれば、こう言ったという。「NHKがこれまで以上にネットを通じて役割を果たしていくことが必要だ」。

 同記事によれば、NHKが行ったアンケート調査で、「ニュースの多角的な理解を助けるサービスは77.3%が『社会にとって必要』と答え、84.3%がNHKの提供に『必然性がある』と回答」したとのことなので、彼のコメントはそれを踏まえてのものらしい。この設問は、誘導尋問もいいところだ。だいたいタダでサービスを提供されれば、調査協力者は、サービスを使った手前、好意的回答をするのは当然で、社会調査の常識からいっても回答の信用性はゼロだ。

ネットで受信料は取れるか

 そもそも、NHKはインターネット、正確にはNTTの光ファイバー回線経由でコンテンツを送るなら、受信料を徴収する理由はなくなる。それを説明しよう。

 1950年に放送法制定のための議論が国会でなされていたとき、当時の電波監理長官・網島毅は受信料徴収の根拠を「第一には、わが国の放送事業の事業形態を、全国津々浦々に至るまであまねく放送を聴取できるように放送設備を施設しまして、全国民の要望を満たすような放送番組を放送する任務を持ちます国民的な公共的な放送企業体」を維持するためだと説明した。つまり、あまねく広く日本全国に放送するための放送設備を拡張し、整備し、維持する費用を得るために受信料を徴収するのだとした。

 GHQの民間通信局(CCS)は、このような放送インフラは日本の国費を投入して作り、そのかわり民放と共同使用することを主張したが、NHKはこれを拒否した。放送インフラをこれからライバルとなっていく民放と共用するより、それを独占して相手に使わせたくない、受信料にその費用を転嫁すればそれはできる、そう思ったからだ。

 民間通信局のほうは、NHKをアメリカの商業放送ネットワーク、のちの日本の民放ネットワークのようにしようと思っていた。つまりキー局が経営上独立した地方局とネットワーク契約を結び、電話回線(マイクロ波回線)で番組を送ることで全国放送をするというものだ。

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