「契約の自由」を侵害するNHKの「割増金徴収」 次はネットでも受信料?

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 受信料不払い者には「割増金」を請求できる改正放送法が国会で可決されてしまった。各国の公共放送が受信料撤廃の傾向にある中、日本だけ懲罰強化というおかしさ。そこには、放送ではないネット配信にも受信料を課そうとするNHKの思惑すら透けて見えるのだ。【有馬哲夫/早稲田大学教授】

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 6月3日、なんの前触れもなしに、放送法の改正法案が国会で通ってしまった。その中で問題なのはNHK受信料に関わるものだ。その中身は、(1)NHKが受信料を強制的に徴収してきたことによって貯め込んだ剰余金を原資として今後受信料を値下げしていく。(2)正当な理由もなく受信契約を結ばない世帯にNHKが割り増しした料金を要求することを可能にする。

 どんな議論があったのかわからないまま出されたこともだが、このように(1)と(2)と抱き合わせで出されたことも大いに問題だ。値下げと追徴金罰則を抱き合わせて出して、国民の目を問題の核心からそらそうという意図がミエミエだからだ。

 イギリスでは、許可料(日本のNHK受信料にあたる)の不払いを処罰するのをやめる方向で検討中で、許可料そのものも方向性としては廃止に向かっている。イギリス以外でも、世界の公共放送は、すでに受信料を廃止したか、イギリスのように廃止する流れになっている。今度成立した改正法はこれに逆行するものだといえる。

NHKの狡猾なやり方

 これまでの放送法では、NHKと契約しなければならないとしながらも違反者に対する罰則はなかった。ところが今回は、未契約者にNHK受信料の追徴金を科すという。これは、回りくどいが、受信契約義務違反に罰則を設けるということだ。

 正面切って受信契約義務違反に対して罰則を科すといえば、相当の抵抗を受けるので、このような狡猾なやりかたで、国民が問題の本質に気付かないようにしている。ただし、共産党の宮本岳志衆議院議員はこれを見抜いたようで「懲罰的徴収」だと衆議院総務委員会で批判している。

 なぜ、これまで、受信契約義務違反に罰則を科すことに国民の反発があったのかといえば、そもそも契約の自由があるのに、それを踏みにじって法によってNHKとの契約を強制することに無理があるからだ。

 たとえば「新聞法によって国民はみな朝日新聞と購読契約する義務がある」としたらどうだろうか。こう例えれば、放送法がどのくらい不条理なことを国民に強いているのかわかるだろう。

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