米紙も驚愕した「歴史的大逆転サヨナラ勝ち」も 「夏の甲子園」地方大会「伝説の決勝戦」

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マエケンに託された再試合

最後にお届けするのが、大阪大会決勝戦史上初の“引き分け再試合”になった04年のPL学園対大阪桐蔭である。

 大阪のファンを二分するライバル対決は、初回に平田良介(現・中日)の二塁打で先制した大阪桐蔭が、2回にも主将・生島大輔の2ランなどで4対1と優勢に立った。

 さらに4対2の8回無死一塁、平田が左中間に本塁打性の大飛球を放つが、不運にも台風10号の影響による強風に押し戻され、レフト・中村成寿がフェンスに激突しながら好捕。結果的にこのプレーで流れが変わる。

 その裏、PL学園は1死二、三塁、4番・中倉裕人が辻内崇伸(元巨人)から右越え二塁打を放ち、4対4の同点に。その後は両チームともあと一打が出ず、延長15回、4時間9分の熱戦の末、引き分けた。

 翌日の再試合、PL学園は、前日15回214球を完投した3年生エース・中村圭に代わって、1年生・前田健太(現・ツインズ)の右腕にすべてを託した。

「前田を楽にしてやろう」と心をひとつにした上級生たちは1回に松嶋祥平が先制ソロ、3回にも神戸宏基が3ランを放つなど強力援護で、5対0とリードした。

 しかしながら、打つことなら大阪桐蔭も負けていない。3回に2点を返し、2対8の6回にも橋本翔太郎の満塁本塁打で一気に2点差まで詰め寄る。さらに7回にも2死一、二塁のチャンスをつくるが、ここは前田が踏ん張り、生島を外角直球で三振に打ち取った。

 実は、大事な場面で勝負強い生島に回ることを想定し、これまでの対戦で意識的に内角攻めを繰り返したあと、一転外角で意表をついたPLバッテリーの頭脳プレーだった。これで流れは再びPL学園へ……。

 前田は11安打を浴びながらも、「前日の先輩の気迫の投球に報いよう」と歯を食いしばって完投し、13対7で勝利。試合後、敗れた生島が「よく投げたぞ。甲子園でも負けないでくれ」と前田にエールを贈る姿が清々しかった。

 なお、生島は高校卒業後、早稲田大に進学。社会人野球の強豪、JR東日本を経て、独立リーグ3球団を渡り歩き、現在は「和歌山ファンデングバーズ」でコーチ兼選手として、現役を続けている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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