米紙も驚愕した「歴史的大逆転サヨナラ勝ち」も 「夏の甲子園」地方大会「伝説の決勝戦」

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「ミスはあの1球だけ」

 一方、両エースともに譲らず、0対0で延長15回引き分け再試合になったのが、13年の広島大会決勝、瀬戸内対広島新庄である。

 7月28日に行われた決勝戦“第1ラウンド”。瀬戸内のエース・山岡泰輔(現・オリックス)は、威力のある直球を内外角に投げ分け、9回1死まで1死球のみの無安打。延長15回を投球数163、被安打1、15奪三振の無失点で投げ切り、「楽しく投げることができた」と振り返った。

 これに対し、広島新庄・田口麗斗(現・ヤクルト)も、「1年のときから何回も対戦してきた山岡に追いつき追い越したい」と並々ならぬ闘志を燃やした。13安打を許しながらも、スライダーを武器に要所を締めて19奪三振。13回無死三塁のピンチも気迫の投球で後続を断ち、15回213球を投げ抜く。

 そして、同30日の再試合、2日前の疲れが残り、「体が重く感じた」という田口は打たせて取る投球に徹して、この日も初回から点を許さない。一方、山岡も「相手が田口だから楽しくて、苦しくなかった」と6回2死一、三塁のピンチも満塁策でしのぎ、0対0の投手戦が続く。

「田口君を相手に勝てるとしたら、1対0しかない」(瀬戸内・小川成海監督)

 ワンチャンスに賭けた瀬戸内は8回、安打と犠打で1死二塁、「何とか山岡を助けたかった」という捕手・大町太一が、ボール2個分内側に入ってきた外角低めスライダーを見逃さず、一、二塁間を破るタイムリー。この1点を山岡が守り切った。

「2人で続けるゼロが、どこまで続くか」を楽しんでいた山岡は、1点が入ったとき、「あっ、終わっちゃうんだ」とどこか寂しい気持ちもあったという。

 一方、23イニング目で初めて失点を許した田口は「ミスはあの1球だけ。全球を全力で投げた」と完全燃焼できたことに満ち足りた表情だった。

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