「六本木クラス」で辛口コラムニストが感じた日韓格差 それでも1つだけ希望はある

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素人演技では興行にならない

林:「六本木クラス」を見ながらそういう妄想を膨らませていて、頭に浮かんできた小説があるのよ。

アナ:おや、何ですか。

林:筒井康隆の『美藝公』(1981年)。

アナ:ああ、日本が経済立国ではなく映画立国を目指して成功していたら……というパラレルワールドSFですね。

林:そうそう。その設定からして、ニッポンが映画はもちろん経済まで弱くなってる今になって思い返してみると皮肉が効きすぎていて泣きたくなるんだけれど、あの小説のクライマックスは、映画先進国である虚構のニッポンの超一流のスタアや監督、脚本家、撮影監督たちが、もしこの国が映画立国ではなく経済立国を目指して成功していたら……という仮定で想像を膨らませて侃々諤々の議論を戦わせるというところ。

アナ:あれは現実と虚構が逆転していて刺激的でした。

林:あの議論の中でスタア論、映画論としてこんなセリフがあったのよ。読んでみて。

アナ:あ、はい。「要するにそれぞれの年代の若者達と同じ年頃で可愛くて、歌も人並みに歌え、何かを演じる仕草もちょっと可愛いという」「しかしそんな若い男女なら、その辺にざらにいるだろう」「しかしそういった、演技も素人、歌もお座なりという連中の出る映画は、バラエティの一部としてならよかろうが、いつもそればかりじゃ興行にはなるまい」……この映画という言葉をドラマに置き換えてみると……。

林:そう。まんま現在只今のニッポンのドラマ。一方、『美藝公』の世界における映画は、かなり現在只今の韓国の映画やドラマに通じている部分がある。映像産業が国からもまともに支援されて、産業として成り立ち、海外進出もビジネスとして成功してる。

アナ:そうか! 『美藝公』の世界が韓国で、あの小説の中で批判される架空の世界が日本だということですね。

林:今回、読み直してみて眼が止まったのは、こんなセリフ。

アナ:「つまり、そういったアイドルたちは、特に藝術大学の映画学部を出たとかいった人たちではないわけですね」……なぜここに着目を?

林:「梨泰院クラス」の主演のパク・ソジュンはソウル芸大の演技科卒なのよ。

アナ:なるほど。まさに『美藝公』の世界。

林:ひるがえってニッポンは……。そりゃTVつけてても「ベストヒットUSA」と「建もの探訪」くらいしか見るもんがないはずだよ。

アナ:……

林:「ベストヒットUSO」、また来週! ……ああ、カラ元気出すのも疲れる……

【了】

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

デイリー新潮編集部

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