二人以上世帯の「平均貯蓄1436万円、中央値650万円」を正しく理解できますか

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「平均値」と「中央値」のレッスン

 昔から「数学は理解することが大切」と言われ続けてきた。理解するからこそ、応用することができたり、新しい発想を生んだりすることができるのである。簡単な例を2つ挙げよう。

 最初は平均値と中央値である。次の11個のデータによって、平均値と中央値について説明しよう。

1、2、2、3、3、3、5、8、9、9、10

平均値=上記の数の和÷11=55÷11=5

 となることはよく知られている。中央値とは、小さい順に並べたそれらの数の中央にある数のことである。ここでは、左右両方から6番目にある数が中央値で、それは3になる。

 なお、データの数が偶数の場合、中央値は真ん中にある2つの数の平均値とする。たとえば、

1、2、2、3、3、4、8、9、9、10

 の場合は、

中央値=(3+4)÷2=3.5 平均値=51÷10=5.1

 となる。

 算数で習うそれらの用語に関する計算法は、子ども達もよく知っている。そして多くの場合、それだけで終りとなる。一歩進めていろいろなデータを用いて計算することによって、次の傾向が分かる。

 上の2つの例のように、小さい数が多く、大きい数が少ないデータの分布では、平均値が中央値より大きくなる。また、大きい数が多く、小さい数が少ないデータの分布では、中央値が平均値より大きくなる。

 上で述べた事実を理解している人は、次のニュースを聞くと実態が「なるほど」と分かるだろう。金融広報中央委員会が毎年調査している「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」によると、二人以上世帯の平均貯蓄額は1436万円、中央値は650万円である。平均値だけ聞き「我家は貧困か」と嘆くより、中央値も聞いて「わが家はちょうど真ん中なのね。楽しく生きよう」と思う方が健全だろう。

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