女性初の「棋士」を目指す「里見香奈・女流四冠」 なぜ将棋の男女差はここまで大きいのか

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“女流棋士といえば”の林葉直子も応援

 これまで編入試験でプロになったのは、瀬川晶司・六段(52)、今泉健司・五段(49)、折田翔吾・四段(32)の3人しかいない。2015年に41歳の史上最年長で棋士になった今泉は、26歳までに四段昇段を果たせず奨励会を退会。故郷の広島県福山市で介護士などをしながら夢を諦めなかった。その後、アマチュアでの無敵の活躍などが注目され編入試験の受験資格を得て、プロ棋士たちを破って合格した。

 里見は女流棋士だからといって、女性とばかり対局してきたわけではない。女流タイトルホルダーが参加できる公式戦に参加し、その通算成績は43勝51敗と、男性プロにとっても十分に手ごわい存在なのだ。

 女流棋士には、蛸島彰子・女流六段(72=引退)、清水市代・女流七段、中井広恵・女流六段(53)などがいる。最も話題になったのは林葉直子(54)だろう。14歳3カ月の最年少で女流王将を奪取、10連覇するなどし、その美貌からも大人気だったが、失踪事件を起こすなどの「お騒がせ」で27歳の時に引退してしまう。元師匠とのスキャンダルはあまりにも有名だ。写真集やエッセイ、小説を出版するなど、多才である。今回、里見の編入試験の挑戦を知り「観戦記を書きたい」とエールを送っているとか。

なぜ将棋は男女差があるのか

 昔から「囲碁は男と女の棋力に極端な差はないが、将棋は違いすぎる」と言われてきた。その理由を「陣取り合戦の地味な囲碁に比べて、敵将(王、玉)を詰める、つまり殺す将棋は、変化も激しい。女性は付いていけないからではないか」などと推察されることもあった。

 男女の力量差について問われた里見は、「歴史も違うけれど、現状としてはかなり差はあると感じているので、少しでも埋められるようにしたい。隣の囲碁界では男女が拮抗している印象を受けるので、私自身の刺激となっている」と答えている。

 かつて大山康晴・十五世名人(1923〜1992年)が、テレビで「どうして女性は将棋が弱いのですか?」と尋ねられた時、「そうですね。ご婦人方は取った駒を貯め込んでしまって、なかなかお使いになろうとなさらないからだと思います」と言ったことがある。将棋には角や飛車、金、銀などをバシバシと捨てていかないと勝てない局面が多々あるので、大名人はそれをユーモアを交えて「女はケチだから負ける」という意味で言ったのだろうか。禿頭に丸眼鏡の独特の風貌で、ぼそりと語った様子がおかしく、噴き出した記憶がある。

 2年前の秋、筆者が司会役で「サンデー毎日」誌上で観戦記者たちの座談会をした際、男女の棋力差の話題になった。結論として、「当然ながら女性の脳みそと男性の脳みその違いの問題などではまったくなく、将棋をやっている女性がまだまだ少なすぎるから」ということに落ち着いた。座談会では、里見やライバルの西山朋佳・女流二冠(27)への期待は極めて大きかった。

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