女性初の「棋士」を目指す「里見香奈・女流四冠」 なぜ将棋の男女差はここまで大きいのか

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 女流将棋最強の里見香奈・女流四冠(30)が、棋士になるための編入試験に挑戦することを決め、7月6日、大阪市の関西将棋会館で会見した。女流棋士と男性棋士が別制度になっている将棋界において、里見は、試験に合格すれば女性として初の「プロ棋士」となる。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

棋士の編入試験とは何か

 会見で里見は「(これまでは)目の前の対局を全力でこなしていたので、あまり考える余裕がなかったが、(編入試験に)挑戦してみたいという気持ちが出てきた」などと話した。

「棋士」というのはプロのことで、奨励会四段以上を指す。藤井聡太・四冠(19)は史上最年少の14歳2カ月で昇段し、話題になった。しかし26歳までに四段に昇段できなければ奨励会を退会させられるため、多くの強豪もここで棋士への夢を絶たれる。女性初の奨励会三段だった里見も、2015年から「三段リーグ」で奮戦したが果たせず、退会した。棋士は170人余しかいない厳しい世界だ。

 挑戦を前に「当時は棋士になることだけを考えていた。いまは自分がどれだけやれるのか。自分の棋力向上を目指し、強い人と戦いたいと思うようになった」とも語った。

 島根県出雲市出身の里見は、12歳の時、女流棋士の二級で将棋界に入った。18歳7カ月の史上最年少でタイトル三冠となるなど活躍を見せ、現在は女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花を合わせ持つ。タイトルは通算48期とトップ。2位は清水市代・女流七段(53)の通算43期だが、里見の年齢を考えると驚異的だ。飛車を中央に振る「中飛車」が得意で、豪快な攻めからも「出雲のイナズマ」との異名を持つ。

対戦相手は5人

 プロ編入試験の受験資格は「直近の公式戦で10勝以上、かつ勝率6割5分以上」。里見は5月の棋王戦予選の決勝で古森悠太・五段(26)に勝ち、10勝4敗として、女性で初めて条件を満たしたのだ。6月24日に日本将棋連盟に受験を申請し受理されたが、実際に受験するかの意思表示には時間をかけた。

 記者会見でそれを問われると、「後悔しない選択をするために、自分の感情が動くかな、というのをぎりぎりまで見ていた。最後は自分がどれだけやれるのかな、というところで判断した」と理由を述べた。

 また、「多くの方に注目されるのは大変うれしいと思うと同時に、そういうこと(女性の棋士への挑戦)が珍しくないような社会になればいいと思う」と語った。

 試験での対戦相手5人はすべて四段の若手。徳田拳士(24)、岡部怜央(23)、狩山幹生(20)、横山友紀(22)、高田明浩(20)に決まっており、8月から月一番ずつ実施される。3勝以上挙げて合格すればフリークラスに編入され、名人戦の予選に当たるクラス別の順位戦も目指せる。里見は5人とも対局経験があるという。

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