「西武ルーキー」が異例の自主退団 野球選手の不祥事がなくならない“根本的な原因”

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東都大学リーグで首位打者に輝いた期待の新人が……

 連日熱戦の続くプロ野球だが、プレー以外の点でショッキングなニュースが飛び込んできた。6月10日に西武を自主退団した川村啓真元外野手が持続化給付金の不正受給に加担していたと、週刊FLASH(2022年7月12日号)で報じられたのだ。退団の4日前である6月6日には川村の兄である川村太晟容疑者(24)が詐欺の疑いで山梨県警に逮捕されており、そのことが引き金になったと見られている。【西尾典文/野球ライター】

 川村啓真元外野手は、日本文理時代の3年夏に甲子園に出場し、ホームランを放つなどの活躍を見せた。国学院大進学後、4年春には全国トップレベルを誇る東都大学野球一部リーグで首位打者を獲得。ドラフトの指名順位こそ育成4位と高くなかったが、将来を高く期待されていた。

 そんな選手が1年目に自らの申し出で退団することは異例だけに、様々な憶測が飛び交っていたが、まさかの事態にファンの間で衝撃が広がっている。プロ入り前に球団は、その選手についてあらゆることを調査すると言われるが、今回の事態はプロ球団側に与えたショックも大きかったようだ。

「球団によって多少の差はありますが、指名を検討する選手については、担当スカウトがあらゆることを調査します。高校生、大学生の場合、表立って本人と接触できるのはプロ志望届を提出してからですが、両親や指導者にはそれ以前から話を聞くことも多いですね。以前は、多少やんちゃな選手の方がいいみたいなこともよく言われていましたけど、最近はプロ野球もコンプライアンスが厳しくなっているので、当然、トラブルになるようなことは事前に知っておく必要があります。ただ、川村元外野手のようなケースまで把握しておくことはなかなか難しいですね。事前に分かっていれば、ドラフト指名を回避するはずで、西武の担当者もビックリしたんじゃないでしょうか。コロナ禍で思うように練習ができなかった時期みたいですから、チーム(大学)の方も目が届かなかったというのはありそうですね」(他球団の関東地区担当スカウト)

甲子園優勝チームの元主将は強盗致傷事件で逮捕

 ここ最近、世間を騒がせることが多い犯罪に現役のプロ野球選手がかかわっていたことが与えた衝撃は大きいが、これまでもOB、現役選手による不祥事は少なくない。今年5月には巨人、近鉄でプレーした小野仁元投手の窃盗容疑による裁判が秋田地裁で開かれ、懲役3年、執行猶予5年の判決が言い渡されている。また、昨年12月にはソフトバンクに所属していた古谷優人元投手がロッカーでの私物窃取が発覚し、球団は自由契約を言い渡し退団となっている。

 このほか、現役選手の大幅な速度超過運転、元選手の詐欺、さらには強盗殺人など悪質な犯罪を挙げればかなりの数にのぼる。最近ではプロ野球選手ではないが、夏の甲子園で優勝したチームの主将を務めた選手が大学の野球部を退部し、その後、強盗致傷事件を起こしたこともあった。

 高校野球、大学野球では「野球を通じた人間教育」を標榜するチーム、指導者も少なくないが、トッププロやトップアマの世界でこれだけ事件が頻発していては、その言葉もむなしく響くだけである。では、こういった不祥事がなくならない背景にはどのような事情があるのだろうか。

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