「西武ルーキー」が異例の自主退団 野球選手の不祥事がなくならない“根本的な原因”

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野球部員は貴重な収入源

「昔はいわゆる“ワル”と呼ばれるような選手も多かったですが、それを厳しい規則や規律で押さえつけて、矯正していた部分があったと思います。そういうやり方についていけなかった選手はドロップアウトすることも多く、その後に何か問題を起こしても『野球部としての』不祥事にはならなかったというのはあるかもしれませんね。最近はそういうやり方をするチームは、比較的少なくなっています。高校でも100人単位、大学だと200人以上の部員を抱えているチームもあって、どうしても全部員に指導者の目が行き届かなくなる。人数を絞りたくても、学校、大学としては少子化の中で、野球部員は貴重な収入源なので減らしたくないという思いもある。そんな中で部員全員をまとめて、一つの方向を向かせるというのは簡単ではないと思います」(関東地区の高校野球指導者)

 筆者は、甲子園をはじめ全国大会で優勝経験のある強豪と言われる高校、大学を訪れたことは度々あるが、そのなかには控え部員に対して全く指導者が目もくれないチームや、室内練習場が乱雑なまま整理されていない場面を目にしたことがある。大人数のチームを昔のような厳しい規律ではなく、管理していくことはやはり簡単ではないと言えそうだ。

驚くほど野球以外のことを知らない

 ただ、スター街道を歩んできた選手が不祥事を起こしている点を考えると、他にも問題の原因があるのではないだろうか。

「やはり、学生時代に野球だけをしていれば良いという環境が影響していることは少なからずあると思います。最近はちゃんと授業に出ないといけない大学も増えていますけど、中には野球部などの力を入れている部活の部員はテストで名前だけ書けば単位をもらえるところもあると聞きます。昔ほどではないにしても、単位をとらずに大学を卒業できない選手もいる。驚くほど野球以外のことを知らない選手が多いです。それでも、超一流になればいいのかもしれないですけど、そんな選手は一握りですよね。高校時代から全て揃った環境でプレーしてきて、一般常識もないままプロになって、若くして戦力外になって苦労するケースがよくあります。入団後、特にお金のこととかを教育する球団がありますけど、基本的には、個人事業主なので本人任せになる部分が多いですよね。今回の給付金詐欺も割の良いアルバイトくらいの感覚で、犯罪という意識はなかったのではないでしょうか」(前出の関東地区担当スカウト)

 こういった不祥事はもちろん野球界に限ったことではなく、他のスポーツ、他の業界でも起きていることかもしれない。しかしながら、人間教育をうたいながら、野球以外のことを知らない選手を多く生み出しているのであれば、やはりプロ野球、学生野球ともあらゆる面を見直す必要があるのではないだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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