中国人民が次々と“ガーシー”化! 習近平政権を揺るがす「女性の顔面踏み付け暴行」事件の余波

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 中国・河北省唐山市で起きた集団暴行事件が異例の展開を見せている。凄惨な暴行の様子がSNS上で拡散され、怒りと真相究明を求める声が中国全土で沸騰。批判の矛先は犯人グループから警察当局、そしていまや唐山市を舞台とした様々な腐敗と不正を市民らが“実名・顔出し”で告発する異常事態へと突入している。

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 事件が起きたのは6月10日未明。唐山市内の焼肉店で食事をしていた4人組の女性客のひとりが、店内にいた男から声を掛けられたことに端を発する。男はさらに女性の背中を触る行為にも出て、女性が拒否する態度を見せると、いきなり殴りかかり、瓶や椅子まで使って殴打。さらに女性の髪を掴んで店外に引きずり出し、男の仲間たちも加わる形で女性の顔面を踏みつけるなどの暴行を働いたのだ。

 女性は血まみれの状態で担架で運ばれ、助けに入ろうとして後頭部を負傷した友人の女性とともにICU(集中治療室)で治療を受ける重傷を負った。

 暴行の様子を捉えた監視カメラの映像がその後、中国のSNSやネットで拡散され、「これが法治国家か?」など怒りの声が渦巻く事態に。香港出身の俳優ジャッキー・チェン氏も「男が女性を殴ってはダメだ」と投稿するなど、事件の衝撃は中国全土へと広がった。

「すでに暴行に関与した容疑で男女9人が逮捕されましたが、犯人グループには中国で“黒社会”と呼ばれるマフィアのメンバーが含まれていると見られています。実際、逮捕者のなかにはオンライン賭博やマネーロンダリング、監禁などの嫌疑がかかっている者もいます」(全国紙外信部記者)

 しかし犯人逮捕で一件落着……とはならず、むしろ日を追うごとに騒動は大きくなっているのだ。

被害者の容体は不明のまま

 中国事情に詳しいシグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏が解説する。

「凄惨な暴行に加え、中国でいう“老百姓(ラオパイシン)”、つまり庶民の怒りに火をつけたのは現地の唐山警察の初動が遅く、地元警察と反社会的勢力との癒着が囁かれていることです。実際にこの事件の捜査を担当しているのは唐山市から約200キロ離れた河北省廊坊市の警察で、庶民の疑念に配慮した措置と見られています」

 さらに国民の不信を深めたのが、被害女性の容体が不明である点だ。事件翌日、唐山警察が「命に別状はない。容体は安定している」と発表して以降、被害女性が“いま、どんな状態なのか”に関する情報は公表されていない。

「しかも、なぜか被害女性の家族や親族などもメディアやSNS上で発言を一切していません。そのため“当局が情報統制のために被害者家族らを隔離しているのではないか”といった憶測まで飛び交っているほど。警察の腐敗が事件の背景に潜んでいるとの指摘が絶えないことも、騒動が沈静化しない要因になっています」(田代氏)

 中国の国営テレビ局CCTVによると、唐山市の警察幹部5人が「深刻な規律違反」の容疑で取り調べを受けているとの情報もあるという。

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