今さら「拘禁刑」創設のウラ 新聞・テレビは解説しない刑務所のヤバい実態

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「日本型刑務所」の誕生

 もともと禁錮刑は確定判決の割合が非常に少なく、加えて、刑務所で退屈だったり、報酬が必要だったりという理由から、入所後に労働を希望する受刑者も少なくなかった。

「禁錮刑は実質的に機能していなかったので、既に廃止されたのと同じでした。今改正のポイントは『懲役刑も廃止し、拘禁刑を新設する』だと考えられます。懲役刑は労働が特徴だとはいえ、犯罪者を懲らしめるためにも行われてきました。今後も懲らしめることは必要だけど、再発防止のためには教育も大切だと国が認めたことになります」(前出の河合教授)

 だが、今回の改正で劇的に刑務所内の状況が変わるわけではないようだ。そもそも現場では、昔から労働と教育を両立させようと、刑務官が努力を重ねていたという。

「日本は明治に開国し、西洋の社会システムを丸ごと受け入れました。その際たるものが司法制度で、懲役も禁錮も“輸入”した制度だったのです。欧米は犯罪者をできるだけ刑務所に送り、仮釈放などで調整します。ところが、日本は長年の経験を経て、欧米流の運用を改め、日本独自の運用を行うようになりました」(同・河合教授)

欧米との違い

 例えば、受刑者の数だ。欧米では基本的に「犯罪者はなるべく刑務所に送る」傾向がある。

 だが日本では、「たとえ犯罪者でも、シャバで更生できるなら刑務所に送る必要はない」という方針だ。逮捕されても、不起訴や起訴猶予になることは珍しくない。執行猶予が付く判決も多い。そのため欧米に比べると、日本は受刑者の数が少ない。

 アメリカの約200万人を筆頭に、欧米は受刑者数が人口を勘案してもかなり多い。一方の日本は、約4万8000人だ。

「日本の刑務所では、労働も単なる懲罰ではありません。『労働を通じて真人間に更生させる』という教育的な側面が強かったのです。近年は具体的な再犯防止のプログラムが追加されたとはいえ、もともと現場では『懲罰と教育』を両立させようと、刑務官などの関係者が努力を重ねていました」(同・河合教授)

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