尹錫悦はなぜ「キシダ・フミオ」を舐めるのか 「宏池会なら騙せる」と小躍りする中韓

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「カモが首相になった!」

――普通の人はともかくも、日本政府まで騙せると韓国は考えているのですか?

鈴置:岸田首相なら騙せる、と韓国は自信を持っています。岸田氏が外相時代の2015年、韓国政府は2度に亘り日本政府を騙した実績があります(「岸田首相から3匹目のドジョウ狙う韓国 米中対立で日本の『輸出規制』が凶器に」参照)。

 軍艦島(端島)をユネスコの産業遺産に登録する直前の約束を破って「日本に強制連行を認めさせた事件」と、不可逆的な解決を約束しておいて後で韓国政府が踏みにじった「慰安婦合意事件」です。

 当時、外交部長官だった尹炳世(ユン・ビョンセ)氏は、岸田氏の首相就任が決まった瞬間「キシダは日本政界の穏健・合理的な人物であり信頼できる。自民党の総裁選により韓日関係に弾みがつくので、積極的に関係改善に出ねばならない」と語りました。

 朝鮮日報の東京特派員経験者、李河遠(イ・ハウォン)国際部長の「<太平路>次期大統領は岸田日本総理と『大和解』を推進せよ」(2021年10月4日、韓国語版)がこの発言を紹介しています。

 要は「なんと、カモが今度は首相になった。また、騙せる」と小躍りしたのです。だから「とにかく首脳会談を開こう」と韓国は言い出した。日本でも、「友好万能主義」の日韓議員連盟や外務省から早期の首脳会談実施を求める声があがりました。

「米国に怒られてもいいのか」

――いくら「騙し易いキシダ」とはいっても、二匹目、三匹目のドジョウがいると考えたのでしょうか。

鈴置:だから少し工夫して、代位弁済案や共同宣言案といった「譲歩」「友好」の糖衣でくるんだのです。子供だましの手ですが。それに「米国」という外堀を埋める作戦にも出ています。

 親米派の尹錫悦政権の発足を機に、米国は米韓日の3国軍事協力の強化を目論む。日本が韓国に冷たいままだと米国に怒られるぞ――というプロパガンダを日本で展開しました。

 外務省のコリア・スクールや一部の韓国専門家も、韓国の宣伝に和して「このままだと米国に怒られる!」と言って走り回りました。「韓国のQuad加盟を邪魔すると、日米関係が悪化する」という人も登場しました。

 神戸大学大学院の木村幹教授は日経新聞に寄稿した「米国の関与、重要な要素に 韓国大統領選と日韓関係」(3月23日)で以下のように主張しました。

・日本はこれまで日米豪印の協力枠組み「Quad(クアッド)」の拡大による韓国参加に消極的な姿勢をみせてきた。それが大きな批判を浴びなかったのは、文政権下の韓国が積極的な意思を示さなかったからだ。だが仮に新政権が「クアッドプラス」への参加を表明した場合、日本が阻もうとすれば、生まれるのは日米間のあつれきだ。

 この認識は現実と180度異なります。米国こそが韓国のQuad参加を明確に拒否したのです。3月19日、国務省スポークスマンはVOAを通じ「Quad参加国を増やす計画はない」と表明しました(「早くも米日とすれ違う尹錫悦外交 未だに李朝の世界観に生きる韓国人の勘違い」参照)。

 尹錫悦政権が夢想した「クアッドプラス」などという、形だけ米国側に戻る二股外交を米国は許すつもりはありません。バイデン(Joe Biden)政権は日韓関係の改善は望みますが、尹錫悦政権の掲げる「米国回帰」は信用しないのです(「『東アジアのトルコ』になりたい韓国、『獅子身中の虫』作戦で中国におべっか」参照)。

「日米のミゾ」を見透かした韓国

――しかし韓国は「米国のテコ」が効くと判断した。なぜでしょうか?

鈴置:日米関係が悪化していると韓国が見切ったからです。岸田首相は2021年11月、第2次内閣の外務大臣に日中友好議員連盟会長の林芳正氏を指名し、米国から疑惑の眼差しを向けられました。

 この時、日本の安保関係者は一斉に米国のカウンターパートから「キシダは何を考えているのか」と聞かれました。質問の形で抗議が寄せられたのです。米国の情報関係者は日中友好議員連盟を中国の「使い走り」と見なしています。結局、大臣就任にあたり林氏は日中友好議員連盟会長を辞任しました。

 岸田首相の不用意さはそれだけではありませんでした。2021年11月18日、バイデン大統領が中国の人権弾圧に抗議するため、北京冬季五輪への「外交的ボイコット」を発表しました。

 しかし、岸田首相は直ちには賛同せず「それぞれの国でそれぞれの立場、考えがある。日本は日本の立場で物事を考えていきたい」と発言したのです。翌11月19日のことです。

「外交的ボイコット」とは選手団以外の外交的な使節団を派遣しない、というやり方です。おどろおどろしく聞こえますが、コロナ下では大した意味はありません。2021年の東京五輪でも、日本は感染拡大を懸念して各国の元首や高官を積極的に招きませんでした。

 中国にとっては痛くも痒くもない。というのに外交的ボイコットに直ちに応ぜず、「日本には日本のやり方がある」と突っぱねた。西側の結束を固めたい米国はこれにも相当にカチンと来たのです。

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