筋トレブームの火付け役が「1日15分しかしない」理由 60歳までに筋トレを始めるべき?

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回数や器具の重量は「目的」ではない

 では、「適切でない筋トレ」とは何か。いくつか具体的に説明していきましょう。

 まず、使う器具の重量や、やる回数にこだわり過ぎることは危険です。たしかに、重いバーベルを上げたり、多くの回数をこなせば、達成欲や虚栄心は満たすことができます。しかし本来、重量や回数は「手段」に過ぎないはずです。にもかかわらず、いつの間にかそれ自体が「目的」にすり替わってしまう傾向にあります。

 あえて極端な例を紹介すると、1日1万歩のウオーキングを目標に掲げたとして、その目的は心肺持久力を向上させ、身体を健康にすることにあるはずです。ところが、だんだんと歩数自体が目的と化し、小股で歩いたり、ひどい場合だと振動マシンに乗って数を稼いだりする。ここまで極端なことは少ないかもしれませんが、気が付かないうちに、それに近いことを筋トレでもやってしまいがちです。

「ごまかした30回よりもきちんとした10回」を

 例えばスクワット。きちんとやれば20回しかできない人でも、腰の下ろし方が浅かったり、あるいは腕を振ったり、しゃがんだ時の反動を利用して弾むといったズルをすれば、50回できる。これこそ、回数そのものが目的となってしまった悪いケースであり、浅いスクワットのことを私は〈浅はかなスクワット〉と呼んでいます。

 腕立て伏せも同様です。本来、腕立て伏せは胸が床に着くまでしっかりと「伏せて」上げる動作であるはずです。それなのに、回数ばかりをこなそうとして、深く沈まずにすぐに戻ってしまっては、回数の割に効果が小さい。これでは腕立て伏せに見せかけたものをやっているに過ぎず、腕立て伏せではなく〈腕立て伏せかけ〉です。

 深く下ろし切り、上げ切って、動作範囲を最大限に使う。このように「フルレンジ」でやるほうが効率よく高い効果を得られます。ですから、〈ごまかした30回よりもきちんとした10回〉をこなすことが大切なのです。

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