「じゃない方芸人」と呼ばれた麒麟・川島はなぜ“逆襲”できた? ノブコブ徳井が考察

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「じゃない方芸人」と呼ばれたことも

 これ以上ないくらい順風満帆に見えていたが、当の川島さんは「生き地獄だった」と、僕の音声コンテンツ「酒と話と徳井と芸人」で語ってくれた。

「じゃない方芸人」
 
 なんと残酷でキャッチーな言葉を「アメトーーク!」は発明したのだろう。

『ホームレス中学生』の大ヒット以降、川島さんは、「麒麟のじゃない方」として田村さんの隣に座り続けることになる。

 と、当時を振り返る川島さんやその頃の世間は言っていたが、僕からすればやはり、川島さんはすごい、という印象がその頃から強かった。

 川島さんがじゃない方芸人? そんな馬鹿な。後輩からすれば、いつだって、オールマイティー面白い芸人だ。

田村の優しさと“品”

 田村さんも今では「バスケ芸人」といじられたりしているが、僕は芸人として芯があり、意外なことかもしれないが、とても上品な人だと認識している。

 幼少期にあれだけ貧乏だったとか関係なく、田村さんは本当に優しく、品があるのだ。

 それに礼節にも厳しく、後輩の面倒見も良く、他人を押しのけて「自分が自分が!」と目立とうとする立ち振る舞いも僕は見たことがない。

 そんな田村さんを僕が最高に格好いいと思うのは、川島さんの活躍で、気が付くと世間から「じゃない方」として扱われるようになった時、田村さんはいじられることをしっかりと受け入れた。これは、できるようでなかなかできない。そんじょそこらの若手では、受け入れられることではない。

 だって、田村さんはできる人だから。

 面白いし、優しいし、本気を出したらすごいのに、世間からいじられることを受け入れる。ここが、芸人して、はたまたタレントとして、可愛げがあるかないか、ということなんだろう。「いや、お前らよりおもろいわ!」とか「M-1の決勝、何回いったと思ってんねん!」とか、言いたくなる。でも、そんなちんけなプライドよりももっと根幹にある品と賢さで、田村さんはいじりや非難も全身全霊で受け止め、笑いで跳ね返し続ける。

「ラーメンはおごったうちに入らん」

 田村さんの素晴らしさについて、書けば書くほどさまざまなことが思い出される。

 少し前に小籔(千豊)さんが、「田村におごってもらった後輩たちは、全員少しずつカンパするべきや」とこぼしていた。『ホームレス中学生』の印税はとんでもなかったと思う。

 けれど、当時何も知らない若手芸人だった田村さんは、半分くらいは税金でとられてしまうとは露知らず、後輩やお世話になった人の為に散財し続けていた。

 僕も何度かご馳走になった。

 お昼、新宿のルミネでラーメンをおごってもらった時に「ご馳走様でした」とお礼を言ったら、田村さんは「ラーメンはおごったうちに入らんから、あいさつなんかせんでも大丈夫やで」と言って下さったことは、忘れられない。田村さんにお世話になった後輩の数は、計り知れない。

 だが、『ホームレス中学生』のバブルがはじけ、徐々に生活も変わるなか、腐らずにいろいろな苦労を受け入れながら、今も変わらずテレビや舞台に出続けていらっしゃるのは、田村さんの才能と人柄ゆえだと僕は思っている。

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