王毅外相の後任を巡り、中国共産党は大モメ 習近平体制は決して盤石ではない

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習体制は不安定?

 人事は最後まで分からないので、往々にして混乱が起きるが、一強体制なら習近平の鶴の一声でこのレベルの人事は決まるはずだろう。このようにぐらついているのは、何を意味するのか? 筆者は、習体制は、日本のメディアが言うほど安定していないのではないかと推測している。プーチンに憧れ、北京五輪ではロシアとの紐帯を喧伝したが直後にロシアはウクライナに侵攻して、中国としては欧米諸国とロシアとの狭間に立たされた。アメリカとの関係は緊迫したままだ。マッチョな地盤固めに腐心してきたものの、肝心の足元では格下人事でどうもぐらついている……。

 異例の三期目に突入する習近平の権力は確かに強い。ただ何でも一人で決めきれるほど中国は小さい国ではなく、各派閥や利益集団のバランスに腐心しなければならない。建国の大指導者だった毛沢東でさえ、常にバランスに気を配っていたのだ。ましてや習近平が勝手なことばかりできるわけがない。私たちは、ウクライナ戦争でロシアの軍事力を過大評価し、本当の実力が見えなくなっていたことを思い出した方が良い。中国を、中国経済を、その軍事力を、そして習近平を過大評価してはいけない。もちろん過小評価もダメで常に客観的に見る努力が求められている。

武田一顕(たけだ・かずあき)
元TBS北京特派員。元TBSラジオ政治記者。国内政治の分析に定評があるほか、フェニックステレビでは中国人識者と中国語で論戦。中国の動向にも詳しい。初監督作品にドキュメンタリー映画「完黙 中村喜四郎~逮捕と選挙」。

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