「朝起きられない」の原因は副腎疲労の可能性が エナジードリンクは逆効果?

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日焼け対策をしすぎない

 食べる物に気を使うことも大切ですが、消化の観点からは食べ方も重要です。消化のメカニズムは「脳相」「胃相」「腸相」の3段階に分かれます。食べ物が胃に入り胃液が出る「胃相」。胃の内容物が十二指腸に移動して消化酵素やホルモンが分泌される「腸相」。そして現代人が最も軽視しがちなのが、食事を取るまでの待つ間に消化の準備を行う「脳相」です。

 食事を作っている時に包丁で野菜を刻む音を聞いたり、味噌汁の匂いが漂ってくるのを感じると、その刺激で、消化管から消化液が出て、胃腸が食べる準備を行う。その結果、消化吸収が良くなり腸内環境の悪化を防ぐことができるのです。忙しいとファストフードで手早く済ませることが多いでしょうが、食事の前にゆっくりとお茶でも飲んでリラックスするなどして、脳相の時間を確保することが大切です。

 さらに、日焼け対策をし過ぎないことも重要です。副腎疲労対策として欠かせない栄養素のひとつとして、ビタミンDが挙げられます。免疫や炎症を調整するビタミンDが不足すると、腸などの炎症が悪化し、やはりコルチゾールが大量分泌され副腎疲労を招くのです。

 一定の日光浴時間を確保しないと、必要な量のビタミンDが生成されないことが、国立環境研究所の研究によって明らかになっています。紫外線による皮膚がんなどを気にして日焼け止めを塗る方も少なくありませんが、現代の生活において「日光を浴びすぎ」という環境はそれほど多くなく、むしろ日焼け止めによって必要な日光を遮ってしまう問題に目を向けるべきではないかと思います。

生き方の見直し

 そして最後に、食生活の見直しなど「肉体の健康」に気を使う以上に大切なことは何か。それは副腎疲労の原因を考えてみると分かります。最も有効な対策は「生き方の見直し」です。なにしろ、副腎疲労の主因はストレスなのですから。

 私自身、10年ほど前に副腎疲労になった時は24時間365日働きづめの生活をしていました。もともと達成欲が強い性格のため、とにかく仕事をしていないと落ち着かなかったのです。その結果、副腎疲労になり、朝は這うようにして病院に行き、何とか頑張って救急患者さんだけに対処して、それ以外の時間は座ったり、横になったりして休んでいました。ところが、夕方になるとパワーが漲(みなぎ)り始め、夜中まで猛烈に働くという状態が続き、結局は疲労が溜まって、手術中に倒れそうになったこともありました。

 副腎疲労になるほど忙しく働いている方の多くは、「自分がやらないと」という使命感に駆られています。何を隠そう、私がそうでした。しかし、副腎疲労になってから思い切って仕事をセーブすることにしてみました。その結果、多くの人が慌ただしく働き、フル回転状態だった、当時私が勤務していた病院はどうなってしまったかというと……。

 以前と変わることなく回っていました。私の気負いとは裏腹に、自分がいなくても職場は機能していたというわけです。

 とどのつまり、自分を過度に痛めつける激しい生活が副腎疲労を招くのです。自分が頑張り過ぎて倒れてしまっては、職場の同僚も家族も誰も喜ばない。このことに気が付けるかどうかが、実は副腎疲労対策の最重要ポイントといえるのかもしれません。

御川安仁(みかわやすひと)
ナチュラルアートクリニック院長。1995年、岡山大学医学部卒業。東日本大震災では災害派遣医療チーム(DMAT)のチームリーダーを務める。国立国際医療研究センター救急部、川口市立医療センター救命救急センター医長などを歴任。2015年にナチュラルアートクリニックを開院。『疲れがとれない原因は副腎が9割』などの著書がある。

週刊新潮 2022年6月2日号掲載

特別読物「『五月病』? 寝ても改善しない!? あなたの『だる重』は『副腎疲労』」より

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