日本の潜水艦“機密情報”が中国に漏れた‥事件化できなかった元公安捜査官の後悔

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日本のスクリュー技術

「武官は、薬事法違反事件の数年前、知人を介して当時現役だった海将補と知り合っていました」

 武官は、何を狙っていたのか。

「当時の中国は、台湾侵攻や東シナ海進出のため、海軍の強化を図っていました。中国はロシアから中古の潜水艦を購入していましたが、スクリュー音が大きかった。そこで日本の音の小さなスクリューの技術を欲しがっていたのです」

 捜査の結果、武官は十数回に渡って海将補と接触していたことが判明した。

「武官は海将補を都内にある高級中華レストランで接待していたことも確認しました。海将補は潜水艦に乗務する部下からスクリュー音を小さくする技術と潜水艦のハッチに使われている防水ラバーに関する情報をわざわざ聞いたようでした」

 もっとも、公安部の捜査が自身に迫っていることを知った武官は中国へ帰国。一方、公安部外事2課は、すでに退官していた海将補を任意で事情聴取した。

「元海将補は、武官と会っていたことは認めましたが、潜水艦のスクリュー技術などは一切教えていないと、容疑を否認しました。確たる証拠がなかったので、結局、立件することはできませんでした。しかし状況証拠では、日本の潜水艦機密情報が中国に流れたのは間違いないとみています。あの時、逮捕できなかったことは今も悔いが残ります。残念でなりません」

 日本にスパイ防止法が成立していれば、状況証拠だけでも立件できたという。

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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