老年医学の権威が明かす「脳の若返り」メソッド SNSの活用法と“高齢者ならでは”の勉強法とは?

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好きなこと、得意なことを

 勉強の定義を変えるという前提の話が、かなり長くなってしまいました。しかし、そこを押さえておかないと、肝心の脳の活性化につながらないのです。

 では、いよいよどんな勉強をするかですが、いちばん大事なのは、自分が好きなこと、得意なことに取り組むという点です。

 日本人の悪いクセに減点法型の発想があります。いまの70代、80代は、とにかく欠点をなくしなさい、という教育を受けてきた世代で、会社でもいろいろな業務で平均点が取れ、大きなミスがなかった人ほど評価されました。

 ところが現代は、ある事柄にすごく精通しているような、特化型の人が評価されます。そのように時代は変わったのに、いまも減点法型の発想から抜けられず、会社を離れてからも、欠点を減らすための勉強をしてしまう人が多いのです。しかも欠点を減らすための勉強は、一般に難しいし、つらいし、やっていて楽しくありません。

 片や好きなことや得意なことなら、勉強していて楽しいし、能力を伸ばしやすいものです。

 たとえば、金属をあつかう商社に勤めていた人なら、金属について詳しいはずです。それを武器に、ロシアとの関係が悪化するとレアアースの入手が困難になってまずい、という話をするのもいいでしょう。ロシアは悪だから国際社会から排除しろ、と訴えるだけの人よりも認知的複雑性が高い話ですから、前頭葉への刺激になるし、周囲も「どういうことだ」と思って引き込まれます。

最初のステップは「好きなもの」を振り返る

 ここが大事ですが、相手に「話が面白い」と思わせないといけません。他人と同じ話をしても、面白くありませんが、その人なりの経験や知識に基づいた話なら、面白く聞こえるものです。

 もちろん、会社での経験だけでなく、幼いころ絵を描くのが好きで、大人になってからも絵画については詳しい、という人なら、もう一度絵を描いてみてもいいでしょう。あるいは、美術史を勉強しなおすのもいいかもしれません。歴史好きなら、自分が好きな分野や時代について深め、自分なりの考えをめぐらせてみてもいいでしょう。

 いずれにしても、自分の人生を振り返って、なにが好きだったか、なにが得意だったかを、あらためて考えなおしてみることが大切で、それが最初のステップになります。

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