英国防省の分析で判明「ロシア軍は東部戦線で大惨敗」“投入軍3分の1を失う”の重要な意味

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 フォーブス(電子版)は5月15日、記事「Russia Lost A Third Of Its Forces In Ukraine. Now It’s Losing The War.」を配信した。翻訳すると「ロシア軍はウクライナで戦力3分の1を喪失。今や敗戦が近づく状況」という感じだろうか。

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 フォーブスが取り上げたのは、イギリス国防省の分析だ。日本でも「ロシア、投入軍3分の1失うと英分析 NATO総長『ウクライナ勝利可能』」(時事通信:5月16日)など、多くのメディアが報じた。

 さる軍事ジャーナリストは、「イギリス国防省の分析結果は、ウクライナ軍の発表した数字より大きな戦果になっています」と言う。

「ロシア軍の陸上戦力は約31万5000人とされています。うち17万人から18万人がウクライナ侵攻に投入された可能性があります。この3分の1ということですから、単純計算すると、約6万人の兵員が失われたことになるわけです」

 一方、ウクライナ軍が発表した戦果を見ると、ロシア軍兵士の戦死者数は2万7700人となっている。

「戦争をしている当事国より、第三国のほうが大きな戦果を発表するというのは、珍しいと言えるでしょう。とはいえ、ウクライナ軍の発表を四捨五入すれば3万人。ロシア軍における兵員の損失が3万人から6万人の間と捉えれば、それほど酷い誤差というわけでもなさそうです」(同・軍事ジャーナリスト)

「3分の1」の衝撃

 ちなみにフォーブスの記事などによると、「3分の1」という推定値は、兵員だけでなく、水兵やパイロット、装甲車両、軍艦、軍用機などが含まれているという。

 兵士の死者数は推定で約1万5000人と報じたメディアもあった。いずれにしても、最初は“弱小国”と思われていたウクライナ軍が、“軍事強国”のイメージが強かったロシア軍の3分の1を撃破したという事実は衝撃的だ。

 その一方で、「まだ3分の2が残っているではないか」と思った方も少なくないのではないだろうか。

 だが、軍が兵力の3分の1を喪失するというのは、とんでもない事態なのだという。

「軍隊における損耗率を考えるため、歩兵の最小戦術単位である分隊を例に取ってみましょう。米軍の場合、ライフル分隊は分隊長の軍曹と10名の兵士、合計11名で構成されています。5名1組の班が2個組織され、各班は伍長がリーダーとして指揮を執ります」(同・軍事ジャーナリスト)

 1班では1名が機関銃手を、もう1班の1名は対戦車ミサイル手を務める。また1班につき1名がグレネードランチャー(擲弾[てきだん]発射器)を担当する。

「ライフル分隊と言っても、全員が小銃だけを撃つわけではありません。各兵士には担当が決められており、規律に従って行動します。そして戦闘状態に入り、1名が戦死、1名が重傷、1名が歩行可能な負傷したと想定してみましょう」(同・軍事ジャーナリスト)

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