甲子園常連校の有望選手が次々退部…不幸な「ドロップアウト」はなぜ起こるのか

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期待と現実のギャップ

 全国各地で春の地区大会が行われている高校野球だが、ここへきてショッキングなニュースが飛び込んできた。春夏合わせて5回の甲子園優勝を誇る横浜高校で、将来が有望視されていた2人の2年生部員が退部していたことが明らかになったのだ。さらに、神奈川県内で横浜とライバル関係にある東海大相模でも、1年から活躍していたレギュラー選手が本人のものとみられるSNSで退学したことを公表した。いずれも中学時代から注目されていた選手とあって、SNS上などでは大きな話題となっている。【西尾典文/野球ライター】

 今回の件についての原因など詳細は明らかになっておらず、選手の将来を考慮して、あえて個別のケースに踏み込まないが、これまで有望選手が強豪校の野球部を退部して、そのまま高校も退学してしまう事例は決して珍しいことではない。

 では、なぜ、そういったことが起こってしまうのだろうか。中学硬式野球クラブチームの指導者に話を聞いたところ、以下のようなコメントが返ってきた。

「一番大きいのは、期待と現実のギャップではないでしょうか。以前と比べて、情報量は格段に多くなっていますが、やはり入ってみないと分からないということは多々あります。選手を送り出す側としては、当然、高校野球を全うしてもらいたいので、本人の力や性格などを考えて、進路相談に乗りますが、『どうしても、〇〇高校に行きたい』と言う希望を曲げない選手や保護者がいます。その一方で、チームによっては、指導者が半ば強制的に進路先を決めるケースもある。それが選手本人のためにならないこともありますよね……。退部まではいかなくても、思い描いていた高校野球とは違って悩んでいる選手は多いと思います」(関東地区の中学硬式野球クラブチーム指導者)

「1年夏からベンチに入れてもらえる」

 中学のクラブチームのホームページを見ると、卒団した選手の進路先が明示されていることは少なくない。選手を預ける保護者の間では、甲子園を狙える高校や有名大学の付属高校へのルートがあるからという理由で、中学時代の所属チームを選ぶというのも、ある意味で“常識”となっている。しかしながら、前出の指導者が指摘するように、選手と高校のミスマッチが生じて、強豪校の有力選手が退部や退学に繋がる事例も散見される。

 もうひとつ大きいのは、期待が高い選手ほど扱いが特別になり、チームの中で“浮いた存在”になることではないだろうか。以前、筆者は、関東地方にある私立高の野球部OBから、こんな話を聞いたことがある。

「自分は3年の夏、地方大会ではベンチ入りしていたのですが、甲子園ではベンチ入りできる人数が20人から18人に減るので、そこで削られて最後はスタンドで応援していました。その時に地方大会では、それほど活躍していなかった1年生が数人甲子園でもベンチに入ったのですが、後から聞いた話では入学する条件として『1年夏からベンチに入れてもらえる』ということだったようです。こちらとしては3年間頑張ってきたのに、そんな条件で入部してくる選手がいたらやるせないですよね。そういうこともあって、今でも当時の監督にはわだかまりが残っています」

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