戦勝記念演説で6回「ナチ」を連呼 プーチンの“微妙な胸の内”を防大名誉教授が読み解く

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 FNNプライムオンラインは5月9日、「【速報】プーチン大統領『戦争宣言』せず ウクライナ侵攻を正当化」との記事を配信し、YAHOO!ニュースのトピックスにも転載された。担当記者が言う。

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「ロシアでは5月9日は、第二次世界大戦でドイツに勝利した『戦勝記念日』です。毎年、首都モスクワで式典が開かれ、ウラジーミル・プーチン大統領(69)が演説を行ってきました。特に今年は、ウクライナ侵攻で国民の戦意を高揚させるため、特別な“演出”が行われるのではないかと、西側諸国が注目していました」

 西側の諜報機関などが情報を収集し、事前に様々な可能性が報道された。中でも「それなりに信憑性がありそうだ」と判断され、世論の関心が集まったのは、以下の4つだった。

【1】プーチン大統領が演説でウクライナに正式な宣戦布告を行うなどし、両国が本当の戦争状態に突入。ロシアが戦時下となる可能性。

【2】式典の軍事パレードにウクライナ兵の“捕虜”を参加させ、見世物にする可能性。

【3】核戦争時に大統領が搭乗することから、「終末の日」という異名を持つ空中指揮機・イリュージョン80が、航空パレードに参加する可能性。式典会場の上空を飛行することで、西側諸国に「核戦争の準備はできている」と脅迫する狙い。

【4】“戦勝”を記念し、ウクライナの激戦地・マリウポリで軍事パレードを行う可能性。

専門家も衝撃

 ところが実際の演説は、ウクライナへの侵攻を正当化し、北大西洋条約機構(NATO)を批判して終わった。

 随所でアメリカを厳しく“口撃”したとはいえ、従来の主張を繰り返しただけ、という印象を抱いた人も多かったはずだ。

“捕虜”を歩かせるような非人道的な演出もなく、空中パレードも天候を原因に中止が発表された。

 ちなみに、現地特派員の報告として、「飛行機が飛べないほどの悪天候には思えなかった」という声を伝えた日本の報道機関もあった。

 東西冷戦など国際関係論の研究で知られる防衛大学校名誉教授の佐瀬昌盛氏は、「私もプーチン大統領は国威発揚のため、演説で大風呂敷を広げてくるとばかり思っていました」と言う。

「実際の演説を聞くと、非常に驚きました。ただ、日本の報道は『演説でウクライナ侵攻を正当化した』など、当たり障りのない報道に終始していましたが、アメリカは違いました。例えばCNNは、『プーチン大統領が自信を喪失している』、『負け戦だと暗に認めた』といった可能性に言及するなど、かなり踏み込んだ報道姿勢でした」

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