DEAを欺いた「日本のヤクザ親分・エビサワ」は本物の闇商人だったのか? 米司法当局がウラン密輸容疑で追起訴 知人は「栃木県の2DKアパートに住むチンケな詐欺師」

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タイ王室に顔がきく

 海老澤容疑者が“仕事場”としていたのは、宇都宮市郊外のファミリーレストランだったという。

「暇だったのでしょう。朝から晩まで居着いていましたね。そこに知り合いを片っ端から呼び出しては、“投資ネタ”を持ちかけるのです。汚いTシャツに短パン姿で、とてもじゃないですがヤクザの風格なんか持ち合わせていませんよ。アイスコーヒー代すら窮しているので、いつも相手に払わせます」

 そんな男の与太話に、誰が騙されるかと思うだろう。だが、海老澤容疑者にカネを騙し取られた被害者は、A氏が知る限りだけでも20人をくだらないというのだ。A氏本人も2008年頃から10年間で、海老澤に2000万円近く騙し取られた被害者である。

「話が非常にうまいのです。私たちは所詮、田舎者でしょう。そんな私たちがまったく知りようもない外国の話を面白おかしく披露するんです。海外ではすごい人脈があって、羽振りがいいんだと。実際、彼は1年の半分近くをタイなどの外国で過ごしていましたし、タイ王室に嫁いだ日本人や地元マフィアとも付き合っていた。私も含めて何人もがタイまで連れて行かれたこともありますが、話に出てくる人物にちゃんと彼は会わせてくれるのです」

ブラックマネー詐欺

 では、いったいどんなネタを、海老澤は持ちかけてきたのか。

「戦後、中国の国民党が共産党を倒すために、西側諸国が集めた裏金ドルを洗浄する話。海外で使えなくなった古い日本の一万円札、数億円を半値で買い取る話など、枚挙に暇がありません。タイに限らずミャンマーやラオスなど、東南アジアが主な舞台です。札束の写真や取引メールなど見せながら、巧みに持ちかけてくるのです。一時期流行ったブラックマネーの話もありましたね」

 ブラックマネー詐欺は、2010年頃、世界中で流行した有名な詐欺だ。使われるのは黒い紙束。特別な薬品をかけると紙幣に戻すことができるが、薬品が高価なため出資してほしいと持ちかけるのが手口で、日本でも多くの外国人詐欺師が摘発された。

「私たちに持ちかけてきたブラックマネーは、フセイン大統領が隠していたドル紙幣という話でした。実際、見せられたこともありますよ。ただの黒い紙切れにしか見えないんですが、彼の話を聞いていると本当の話に思えてしまうんです」

 最後に「あと100万円足りないんだ」と持ちかけるのが常套句だという。

「種銭として500万円が必要。400万円は自分で何とかかき集めたが、あと100万円あれば上手く運ぶんだってね。最初に出資してしまったら、もう網の中。返ってこない金を取り戻そうとして、どんどん次の儲け話を持ちかけられ、ハマっていってしまう。いつしかマインドコントロール下に置かれてしまうわけです」

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