米司法当局に逮捕された「ヤクザ幹部・エビサワ」 実際は「栃木県の2DKアパートに住むチンケな詐欺師」と被害者が証言
ロケットランチャーを肩に乗せ、不敵な笑みを浮かべる男の正体は、ショボかった。4月7日、米司法当局は、麻薬の密輸や地対空ミサイルの購入を企てたとして、日本のヤクザ幹部、エビサワ・タケシ容疑者(57)を逮捕したと発表した。だが、男の素性を知る人たちは、「アイツがいつヤクザになっていたんだ?」と失笑している。ヤクザ幹部とはあまりにかけ離れた男の“チンケな人生”とは……。
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【写真】新旧の一万円札を両手に持つエビサワ容疑者。こうした写真を“小道具”にして詐欺を繰り返していた
DEAも騙されていた
エビサワ・タケシ容疑者を逮捕したのは、アメリカの麻薬取締局、通称・DEAである。DEAはメキシコの麻薬戦争などにも介入してきた、世界最強の麻薬取締機関として知られる。
エビサワ容疑者はタイ人の共犯者3人と共謀し、ミャンマーの反政府勢力に渡すために、米国製の地対空ミサイルやAK-47などの自動小銃を購入することを計画。対価として、ヘロインやメタンフェタミンといった覚せい剤のサンプルを米国内に密輸した。
だが、取引相手だと思い込んでいた売り手は、DEAのおとり捜査員たちだった。DEAは、2年にわたる捜査を経てエビサワ容疑者らを逮捕。検察当局は、「日本のヤクザ幹部」「シンジケートのリーダー」を摘発したとして、写真入りの起訴状を公表したのだった。
海を渡って飛び込んできたこの一報に騒然としたのは、日本の極道社会である。誰も「エビサワ」なる親分を見たことも聞いたこともない。警察当局も、暴力団員としてデータベースに登録がなかったため、「いったい、どこの組のエビサワなんだ?」という騒ぎに発展したのである。
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