サイボーグから伝説へ…おかえりあやや! 9年ぶりのカムバックで見せつけた「平成最後のソロアイドル」の貫禄

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 平成最後のソロアイドル・あややこと松浦亜弥さん。ルックスやパフォーマンスの完成度の高さ、スキャンダル知らずの私生活まで、アイドルのお手本のような人である。2014年からの無期限活動休止を経て9年ぶりに、コーヒーのCMで待望のメディア復帰。清潔感のある歌声と美しさは、当時と変わらない。

 わたし自身は熱心なファンではないが、あややのすごさはよくわかる。完璧なアイドル像の再現性の高さというか、細部にわたってコントロールの上手な人という印象だ。見た目のかわいさはもちろん、歌もダンスもトークもハイレベル。ゆえに「サイボーグ」と呼ばれ、10代にして「あやや23歳説」がまことしやかにささやかれたのは笑い話だ。そんな、実に地に足のついた落ち着きを感じる人だった。

 つんく♂さんが確信犯的に作ったケレン味あふれる歌詞や世界観を、ものすごく高い解像度できちんと着地させる力。鳥越俊太郎さんによるインタビューを読むと、肩書はアイドルだが本人は歌手と自認していると語るくだりがある。でも歌手という自覚におぼれず、アイドルとしての人気におごることもなかったように見えるあやや。むしろ理想と現実との差ゆえに、冷静に高いパフォーマンスができていたのではないか。個人的に重なるのが、森高千里さんである。

高度なバランスでアイドル性とアーティスト性を両立 森高千里さんと重なる冷静なまなざしと絶妙な距離感

 あややは森高さんの「渡良瀬橋」をカバーしたことがあるが、森高さんもまた、高度なバランスでアイドル性とアーティスト性を両立する人だ。最大のヒット曲「私がオバさんになっても」では、美脚もあらわなミニスカートで、ユニークな歌詞にあわせて歌い踊る。大盛り上がりのファンを目の前にして、森高さんは微笑みを浮かべながらもどこか冷静に見える時がある。ファンがどこに反応しているのか、狙い通りに反応しているか。アイドルではなくマーケッターの目で確かめているような表情を感じるのだ。

 同じ印象を、あややからも受ける。CMクイーンとしても君臨していたが、画面ごとにくるくると変わる表情にもほころびはなかった。あまりの隙のなさに、鳥越さんや石橋貴明さんなど周りの大人がこぞって心配していたものだ。本人によれば多重人格的に演じ分けられる器用さと、負けず嫌いな性格による部分が大きかったという。一方で他人の期待に消費され続けることなく、きちんと自分の身は自分で守る姿勢も見せていたのがあややのすごいところである。

 少し前に、彼女がファンにかけた言葉がツイッターで話題になった。「私はあなたたちのプライベートに責任をもてない。私ばかり追いかけて人生狂っちゃったと言われても困るので、私は私で幸せになるから、あなたはあなたで幸せな環境にいてほしい」という内容だった。擬似恋愛の夢を見せるアイドルよりドライに聞こえるが、至極まっとうで親切なアドバイスだ。自意識ともファンとも絶妙な距離を保ち続けることの難しさは、ハロプロOG含め数々のアイドルの波乱万丈な人生を見ればよくわかる。

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