NHK、実働4時間のスタッフに月100万円の報酬… 元記者が証言する“高給のカラクリ”

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 ディスカウントストアのドン・キホーテが昨年発売した“テレビチューナー非搭載”テレビが、「NHK受信料のかからないテレビ」として話題を呼んだ。それほどまでに世間の関心が高い受信料については、元NHK記者の大和大介氏も「高すぎる」と指摘する――。

※本稿は、大和大介『元記者が証言するNHK報道の裏側―NHK受信料は半額にすべき』(展転社)の一部を再編集したものです。

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「給料を2倍にする方法を教えよう」

 巨額の受信料を元にしたNHK職員の待遇は、ネット上で「上級国民」と揶揄されるほど優遇されている。令和2年度のNHKの人件費から算定すると、職員1人当たりの年収は1075万円。私は比較的高給といわれる朝日新聞社からNHKに転職した際、よく周囲から「給料が相当減ったんじゃないか」と言われたが、実際の手取り収入はほぼ変わらず、返答に困った記憶がある。

 実はこれにはNHK独自の出退勤の入力システムも関係している。NHKでは職員が日々の勤務状況をみずから入力する。一般の会社では当たり前の光景だと思うが、丼勘定の新聞社では日々の勤務時間を打ち込む習慣がなかったので、みずから勤務時間を入力できる仕組みは新鮮だった。その入局直後、上司から入力の仕方を教わった際に言われた忘れられない言葉がある。

「今から給料を2倍にする方法を教えよう」

 2倍はいくら何でも極端で、冗談交じりの会話の流れで出た言葉だが、要は正直に実際の勤務時間を打ち込んでも残業代にカウントされないので、残業時間も工夫して入力する必要があるとの説明だった。例えば早朝から働いた場合、午前7時前なら早出手当がつくとか、残業をしたときに中途半端に深夜勤務をつけるより、午前7時~午後11時と入力するとコストパフォーマンスが良いなど、手当が最大限になる入力パターンを教えてくれた。一般の職員は出退勤の際にカードで打刻するのでこうした作業はないが、記者の場合は局に寄らずに県庁や警察などに直行するケースが多い。自己申告で勤務時間をまとめてパソコンで打刻する中でこうした“調整”をすることが可能だった。

 今は新聞社も変わったかもしれないが、私が新聞記者だった時代は、どれだけ深夜勤務をしようが給料が加算されることはなかったので、これには驚いた。もっとも今から考えて見ると勤務時間をきちんと記録させなかった新聞社の方に問題があると思う。

かつての「日本薄給協会」は今は昔

 これは私がNHK労組「日放労」の支部で副分会長を務めていたときにセミナーで労組幹部から聞かされた話だが、かつてNHK職員の給料は水準が低く、「日本薄給協会」と自虐的に語りながら給与アップの交渉に臨んでいた時期があったそうだ。そうした先人の地道な取り組みが今の待遇につながっているとの内容だった。

 ただ、NHK職員に限らず人間の欲には限りがない。NHK内でよく聞くのが、「同じ仕事をしている民放に比べて給料が低すぎる」との声だった。確かに民放の給料やボーナスは驚くほど高額だった時期があった。組合員に配布された資料によると、ある民放キー局のボーナスの平均額が200万円以上と信じられない額が記載されていた。

 だが、これは明らかに民放が異常で、同じテレビ局だからといって受信料で成り立つNHKの職員が同じ待遇を望むこと自体が間違っている。確かに記者の業務を比べると民放よりNHKの方が労働時間は長いかもしれないが、そもそも組織の成り立ちが異なり、比較することがおかしい。ただ、その民放もコロナ禍で広告収入などに陰りが出て、かつての高待遇の時代は終わりつつあるようだ。フジテレビは令和3年11月、希望退職者を募ると発表した。給与が高い満50歳以上を対象に退職金を上乗せするというから、実際のところは高収入に見合った活躍が期待できない中高年層のリストラに近いのだろう。

 NHKに戻れば、結局、年収1000万円以上を得ても人は上を見てしまうということなのだろう。そんな意識から抜け出せない職員からすれば、私のように給料が高すぎると指摘するOBなどは噴飯物だろう。

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