健康長寿を実現する「年代別の生き方」 6千人超の高齢者を診た専門医が指南

ドクター新潮 健康 長寿

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50代で前頭葉は老化が

 50代は認知症の有病率が1万人に8人で、要介護率は1%未満。がん死亡率は10万人あたり146で、目に見えて老化する人は、ほとんどいません。しかしながら、いくつかの問題がまとめて起こる年代でもあるので、注意が必要です。

 まず、前頭葉の萎縮が進みます。人間の脳の表面積は、およそ新聞紙1面分に相当し、そのうち4割強を前頭葉が占めています。

 私は高齢者医療が専門の浴風会病院に長く勤務しましたが、そこで膨大な数の脳のCTやMRI検査画像を観察するうちに、人間の脳のなかで最初に老化が始まるのが、前頭葉であることに気付きました。

 前頭葉が萎縮しても知能は落ちませんが、意欲や創造性が減退したり、感情のコントロールが利かなくなったりします。しかし、比較的若いうちから生活習慣を見直し、思考を訓練することで、機能の低下を遅らせることができます。

 それには日常生活のルーティンをなるべく避けること。駅までの道順を変えるのも、行きつけではない店で外食するのも有効です。また、自分とは相いれない考えの本を読むのも、よい刺激になります。こうしたことは60代以上の人も、意識してほしいと思います。

男性ホルモンの減少で記憶力が低下

 とはいえ、50代で認知症になる確率は相当低いですが、問題は神経伝達物質の一種で「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌量が減るので、元々人口の3%はいるとされるうつ病が増えます。結果、自殺する人も増えます。50~60代ではうつ病でも、もの忘れをしやすくなりますし、特に男性は、5~10%の人が男性ホルモンの減少が原因で、記憶力が落ちます。

 すると若年性の認知症を心配する人が多いのですが、その前に、うつや男性ホルモンの減少が原因である可能性を疑ってみる必要があります。うつ病にはチェックリストがあり、男性ホルモンの量は血液検査で調べられます。また、男性ホルモンを注射で補充すれば、その減少が原因の症状は劇的に改善されます。

 セロトニンや男性ホルモンを増やすには、肉やコレステロールを摂取するとともに、運動をし、日光を浴びることです。特にセロトニンの分泌を促すためには日光を浴び、屋内でもなるべく明るくすることが有効です。女性の場合は日光を浴びると、女性に多い骨粗鬆症の予防にもなります。

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