日本もアルカイダに狙われていた‥元公安警察官が初めて語る「高速鉄道爆破未遂事件」

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爆発物取締法違反

 パキスタン人のボスが、アルカイダと直接連絡を取っていたという。

「暗号を使ったメールでアルカイダと連絡していました。日本から直接アフガニスタンへメールすると怪しまれますから、最初ベルギーにメールして、そこからアフガニスタンに転送していました」

 テロ計画の全貌を把握した公安部は2002年春、爆弾など危険物を取り締まる警視庁の生活安全部に連絡した。

「公安部長が生活安全部長に捜査状況を説明して、テロリストを爆発物取締法違反で逮捕してもらうことになったのです。公安部が逮捕すると、法廷に捜査員が出廷することになります。国内には他にテロリストがいるので、捜査員の名前や顔を知られたくなかったからです」

 逮捕当日、20人以上の生活安全部の捜査員が北区のマンションに踏み込んだ。

「生活安全部の捜査員に交じって、公安捜査員も部屋に入りました。念のためマンションの近くには、爆発物処理班も待機していました」

 室内にいたパキスタン人のボスを含む3人を逮捕した。

「爆弾が仕込まれたスーツケース3個を押収、いつでもテロ計画を実行できる準備が整っていました。あの時、もし逮捕が遅れたら、計画が実行に移されて大きな被害が出ていた可能性があります」

 押収したパソコンを分析したところ、アルカイダと連絡を取っていたことも確認できたという。

「逮捕された3人は、裁判で罰金刑が下り、国外退去処分となりました。残る2人のテロリストは、行方がわからなくなりました」

 当時は、テロ等準備罪法(2017年7月施行)がなかったため、テロの計画段階での逮捕ができなかったという。

「爆弾を準備していたという具体的な証拠をつかんだので、生活安全部に爆発物取締法違反で逮捕をお願いしたわけです」

 もし、ワールドカップ期間中にこの計画が実行に移されていたら……。考えただけでもゾッとする。

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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